ニトリのカーテン回収事業等 窓まわり商品の回収~リサイクルの実態と社会課題の共有化に向けて【加筆・改訂版】 

ニトリグループによる使用済みカーテンの回収事業が、この2年間で、累計重量で1,170トン、全国各店舗に持ち込まれたお客様は31万8,000人となりました」・・・このニュースを先の7月1日付の[BLOG・インテリア余話」で投稿・公開したところ、大変多くの皆様方が関心を寄せられました。これら関心・意識の高さを受けて、改めて、現行窓まわり商品が抱える社会的課題について提案させていただきます。

 先の消費者長官伊藤明子氏、および 現長官の新井ゆたか氏によると、

1)『SDGsの達成に向けてはエシカル消費(つかう責任)と消費者志向経営(つくる責任)を車の両輪として推進することが重要である』と説いておられます。

2)『消費者志向経営とは消費者と共創・協働し、商品・サービスの改善等を通じて、消費者の行動変容を促し、社会価値向上をめざす経営である』と説いておられます。

1,ニトリグループによる使用済みカーテンの回収累計重量が1,170トンに達しました

1)地域々のお客様(消費者)と共に・・・2022年度から~2023年度の2年間で、ニトリグループ全店舗に持ち込まれた使用済みカーテンが累計重量で1,170トンとなり、持ち込まれたカーテンの平均目付重量を仮に200g/㎡とすると、1,170トンは585万㎡相当となります。回収に参加されたお客様は実に31万8,000人となり、この数字は中核都市の全人口に匹敵する数字となります。

2)SPA・製造小売業の強みをいかした全国規模でのカーテン回収事業の展開へ・・・ニトリグループにおいては、地域々のお客様(消費者)と共に、SPA:製造物流工売業の強みをいかした地域密着・顧客直結型の使用済みカーテンの回収~リサイクル事業が全国規模での広がりをみせており、2030年のSDGs開発目標に向けて、更に大きな実績を積み上げていくものと想定されます。オーダーカーテン市場においても、使用済みカーテンの回収~リサイクルシステムの構築が急がれるところです。

2,カーテン等窓まわり商品の回収~リサイクルの実態(各社統合報告書等より引用作成)

1)カーテンについては・・・サンゲツ、東リ、川島織物セルコンにおいて、自社カーテンのリサイクルラベルラベルが添付されているカーテンについてのみ回収~リサイクルの対象となっております。

  リサイクル区分 回収の概況等                                   回収数量等                    
サンゲツ            ケミカル
   マテリアル
   サーマル                
サンゲツカーテン・エコプロジェクト。「サンゲツカーテン・リサイクルシステムのタグラベルが付いているカーテンが対象       ・累計実績
(2023年9月時点)
 ケミカル 3,505㎏
 マテリアル1,500㎏
 サーマル 14,695㎏
東リ   ケミカル
   マテリアル
広域認定にもとづくリサイクルの実施。リサイクル専用ラベルが付いているカーテンが対象(家庭用除く)リサイクル材料によるAJフックの製品化回収数量等の具体的情報開示なし
川島織物セルコン   ケミカル
   マテリアル
広域認定の取得「川島織物リサイクルカーテンマーク」を付けた不要になったカーテンが対象。新日本製鉄との連携によるリサイクルシステムの導入回収数料等の具体的情報開示なし


ニトリグループ   マテリアル
   *リユース
全国・全店舗で使用済みカーテンを常時受付中。自動車の断熱材「フエルト」へのリサイクル。リユースでは東南アジアでのリサイクルショップでの製品&生地でのリユース*累計実績
 2022年度~2023年度 回収されたカーテンの累計重量1,170トン、
参加客数31万8,000人

2)ブラインド、ロールロールスクリーン、カーテンレール類については・・・各メーカーからの回収~リサイクルの実態報告、情報開示はなく、現状は単純焼却・埋立処分が全てと想定されます。

3,資源循環型社会の実現に向けて-WT業界全体での社会課題の共有化をー

NIFの「市場規模の策定」によると、2022年度の窓まわり商品の市場規模は、カーテン1,019億円、ブラインド類305億円、スクリーン類358億円、カーテーレール類219億円・・・合計1,091億円相当量の使用済みカーテン、ブラインド類等が回収~リサイクルされることなく単純焼却、埋立処分となっているものと想定され、大量の資源の損失となっております。

オーダーカーテンの一部においては自社ブランドの「リサイクルラベル」がついているカーテンについてのみ、回収リサイクルの対象となってはいますが、全体量から見ると回収カバー率は低く、大半の使用済みカーテンは単純焼却・埋立処分となっており、ブラインド、スクリーン類についてはほぼ全量が埋立処分となっております。

サッシ、床材、カーペット業界においては、回収・リサイクル事業への取組みを業界全体で推し進めていこうした動きになっておりますが、残念ながら、カーテン・ブラインド業界からは回収・リサイクルシステムの構築等業界全体で取り組んでいこうとする声はどこからも聞こえてきません。

【本事業はメーカー単独では限界があり、先ずはカーテン、ブラインド、スクリーン類等の産業廃棄物の実態調査から着手し、社会課題解決に向けての問題点を整理し、課題の共有化を図っていくと共に、WT業界全体としての取り組みに押し上げていくことであり、WT商品における資源循環型社会への貢献はサステナブル社会の時代の要請でもあります】

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所***