『大阪・北新地の心療内科クリニック』の痛ましい火災事故から丸3年・・・木製ブラインドの防炎問題・防炎のあり方を考える 

26名の尊い命が犠牲となる「大阪北新地の心療内科クリニック」の痛ましい火災事故・事件から、12月17日で丸3年となりました。火災からの痛ましい事故を未然に防ぎ、安心・安全を最優先していくことの大切さを痛感させられた出来事でした。・・・この痛ましい出来事と木製ブラインドの防炎問題とは直接の関係性は無いですが・・・当研究所では毎年この時期は「窓まわり商品の防炎問題・防炎のあり方を考える日」としており、今年もまた「木製ブラインド」の防炎に関わる問題提起を取り上げます。

1)ロールスクリーンは1980年当初の上市から、全柄防炎でスタート・・・

現行仕様のロールスクリーンが国内で初めて上市された1980年当初から、ロールスクリーンは「全柄防炎であること」を大前提として、消防法第8条3の法の精神に則り、防炎防火対象物件向けであれ、一般住宅向け等であれ、防炎性能を有した、防炎ラベルが貼付された、安心・安全な「防炎物品」を届けていくことが基本となっています。

2)木製ブラインドは、いつまで「防炎製品」としての扱いに留まっているのか・・・

木製ブラインドの燃焼実験の経験はお有りですか;「怖いぐらいに炎をあげて一気に燃え広がります」

これまで当研究所では、機会ある毎に木製ブラインドの「防炎物品」指定に向けて、問題提起等してきておりますが、未だ「防炎製品」としての扱いに留まっています。

日本インテリ協会の2023年度の「市場規模の策定」によると、木製ブラインドは59億円市場を形成するまでに成長しました。天然木の持つ温もり感、高質・高級感が好まれ、タワーマンション等高層建築物を始めとして、住宅、非住宅市場ともに広く使用されるようになりました。

しかし現行の木製ブラインドは一部メーカー製品を除き、大半が非防炎品であり、かつ、カーテン、ロールスクリーンのように防火対象物での使用が義務づけられた「防炎物品」ではなく、「防炎製品」としての扱いとなっています。

木製ブラインドを起因とする痛ましい火災事故が発生してからでは遅すぎます。全柄・全樹種防炎性能を有する木製ブラインの開発・展開と、防炎防火対象物には「防炎物品」として、木製ブラインドの取付・使用を義務づけ、徹底していく・・・当研究所が毎年繰り返し問題提起してきたことです。 

3)カーテン、布製ブラインドのこれまでの防炎物品指定の歩みから学ぶべきことは・・・

出所;消防庁「防炎の実際知識」より引用・作成

     カーテン、布製ブラインド等窓まわり商品の「防炎対象物品」指定の歩み
昭和36年消防法施行令が制定される。各市町村は火災予防条例で劇場、ホテル等で使用するカーテン等の防炎化を義務づける。
昭和41年川崎市金井ビル火災(死者12名)、水上温泉火災(死者30名)において、カーペットの燃焼が問題視され、消防審議会において「高層建築物、地下街における防炎対策のあり方」として、カーテン等の防炎処理について配慮すべきことが答申される。日本防炎協議会が防炎カーテンに係る品質管理業務及び表示事業を開始する。
昭和43年消防法の改正により消防法第8条の3の規定が制定される
昭和44年磐梯熱海温泉火災(死者30名)の痛ましい火災事故を受け、消防法施行令が改正され、新たにカーテン、暗幕等が「防炎対象物品」として指定される。
昭和47年消防法施行令が改正され、新たに布製ブラインド、展示及び舞台用合板、繊維板等が「防炎対象物品」として追加される

上表の通り、布製ブラインドは昭和47年の消防法施行令の改正により、「防炎物品」として追加されています。カーテン、布製ブラインド等のこれまでの「防炎物品」指定の歩み、歴史から学ぶべきことは、今日の消防法第8条の3はこれまでの痛ましい火災事故を教訓として成り立っているといっても過言でなく、法令遵守の徹底を図り、火災からの痛ましい人身事故を未然に防ぎ、より安心・安全な防炎対象物品・窓まわり商品を提供していくことの重要性と責任が求められています。

4)木製ブラインドの全樹種・全柄防炎と「防炎物品」指定に向けて・・・

木製ブラインドが防炎物品としての扱いでないのは・・・現行の消防法施行令で定められた「布製ブラインドではないから・・・」との事由からのようであり、もしそうであるならば、布製ブラインドが防炎対象物品として指定されたのは昭和47年、実に今から半世紀以上の前のことであり、時代は大きく様変わりしています。

窓まわり商品市場は、ブラインドを構成する素材も綿やポリエステルなどの繊維素材を始めとして、木材や竹材、和紙や樹脂材、フイルム類等々多岐にわたっており、、消費者の嗜好や生活様式が大きく様変わりした令和の時代にあっては、「布製」だけでは括れなくなっております。火災からの痛ましい事故を未然に防ぎ、安心・安全を優先していく・・・時代の変化・市場の実態に見合った、木製ブラインドの防炎製品から防炎物品への見直しは時代の要請ではなかろうかと考えられます。

タワーマンション等高層建築物をはじめとする「防火対象物」には、防炎性能を有する「防炎物品」としての木製ブラインドの取付・使用を法的に義務づけしていく・・・痛ましい火災事故が起きてからでは遅すぎます。

5)「窓まわり商品の防炎問題・防炎のあり方を考える日」に当って・・・

当研究所では毎年12月のこの時期を『窓まわり商品の防炎問題・防炎のあり方を考える日』として、法令遵守の徹底、防炎ラベルの運用管理の徹底等を図っております。消防法第8条の3法令遵守、防炎ラベルの運用管理の徹底は室内装飾事業に携わるものとしてその責任は重いものがあります。

業界内においては、これまで時として、忘れた頃に、法の精神にそぐわない、法に反する事案が発生しています。防炎カーテンのトレサビリティの運用等やらなければならないことの徹底や、防炎ラベルの品目間流用などやってはならないことが発生することのないように、安全・安心な防炎物品をお客様に届けていくことの大切さを疎かにすることなく、法令遵守の徹底に努めていきたいものと考えております。

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所より*** 

新刊案内【ロールスクリーンの専門的実践知識】を発行。窓装飾の専門的実践知識とスキルを深めて頂くために・・・社員研修用教材としても最適な専門書。

基本編】では・・・カーテンとロールスクリーンの違いをご理解頂き、何故硬仕上樹脂加工が必要なのか、ロールスクリーン特有の外観特性基準等々の基本的知識を深めていただく内容となっています。

取付施工編】では・・・取付施工現場に応じた専門的知識とスキルの向上を図り、スクリーン選定や取付施工時の注意事項等、お客様への的確な助言と信頼性醸成に役立つ内容となっています。

関係法令編】では・・・消防法第8条の3の「法令遵守の徹底、やらなければならないこと・やってはならないこと」と題して、法体系の理解を深めていただくとともに、取付施工現場での法令遵守、防炎ラベルの運用管理の徹底等についての内容となっております。

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