カーテン、布製ブラインドの防炎行政の歩みと木製ブラインドの「防炎対象物品」「全樹種防炎」に向けて     

近年、木製ブラインドが好調で、天然木の持つ質感、高級感が好まれ、タワーマンション等の高層建築物をはじめ、広く使用されるようになってまいりました。しかし、現行の木製ブラインドは「防炎製品」の扱いであり、カーテンやロールスクリーンのように、防火対象物への取付・使用が法的に義務づけられている「防炎対象物品」としての認定にはなっておりません。火災からの痛ましい事故を未然に防ぎ、安全・安心を最優先していくことの大切さから、現行の木製ブラインドにおける防炎問題について,次の通り取り上げてみたいと思います。

1,カーテン・布製ブラインドのこれまでの消防法施行令・法改正の歩みについて・・・

カーテン、布製ブラインドの消防法施行令・法改正の歩みは次のようになっております。(消防庁・防炎制度の沿革より一部抜粋)

●昭和36年・・・

消防法施行令が制定され、防炎対象物品が指定される。各市町村は火災予防条例で劇場、映画館、ホテル等公衆集会場で使用するカーテン等の防炎化を義務づける。

●昭和41年・・・

川崎市金井ビル火災(死者12名)、水上温泉火災(死者30名)において、カーペットの燃焼が問題視され、消防審議会において「高層建築物、地下街における防炎対策のあり方」として、カーテン等の防炎処理について配慮すべきことが答申される。日本防炎協議会が防炎カーテンに係る品質管理業務及び表示事業を開始。

昭和43年・・・

東京・浅草国際劇場火災(死者3名)、消防法の改正により消防法第8条の3の規定が制定される。

●昭和44年・・・

磐梯熱海温泉火災(死者30名)の痛ましい事故を受け、消防法施行令が改正され、新たにカーテン・暗幕等が「防炎対象物品」として指定される。日本消防検定協会が防炎カーテン等の鑑定を開始。

●昭和47年・・・

消防法施行令が改正され、新たに布製ブラインド、展示用及び舞台用合板、繊維板が「防炎対象物品」として追加される。

●平成19年・・・

日本防炎協会・防炎製品認定委員会において、木製等ブラインドが「防炎製品」として認定、開始される。

2,木製ブラインドの「防炎対象物品」認定に向けて

現行の木製ブラインドは「防炎製品」としての扱いであり、カーテンやロールスクリーンのように防火対象物への取付・使用が義務づけされている「防炎対象物品」としての認定にはなっておりません。

消防法施行令が制定されたのは昭和36年であり、昭和47年(1972年)の法改正により、布製ブラインドが「防炎対象物品」として新たに追加されてから~今日まで実に半世紀(50年)が経過しております。50年前当時から比べると、住環境も変り、窓回り商品も大きく様変わりし、ブラインドを構成する素材もポリエステルや、綿、ガラス繊維だけでなく、紙や竹、木材、樹脂材等々と多岐にわたっており、これまでのように消防法施行令で定める「布製ブラインド」では括れなくなっております。

現行の木製ブラインドは、カーテンやロールスクリーンのように防火対象物への取付・使用が法的に義務づけされている「防炎対象物品」ではなく、「防炎製品」としての扱いであり、高層建築物等防火対象物への取付・使用を推奨していくという扱いになっております。タワーマンション等防火対象物に非防炎の木製ブラインドが取り付け、使用されていることはないと考えておりますが、防炎性能を有した木製ブラインドの取付・使用を法的に徹底していく為にも「防炎対象物品」としての認定が待たれるところです。

3,木製ブラインドの「全樹種防炎」加工技術の確立に向けて・・・

現行の木製ブラインドは「全樹種防炎」ではなく、防炎性能を有するのは桐材や樹脂性木調ブラインドなど一部商品に限られております。市場の大半を占めるバスウッド等の輸入材の木製ブラインドは非防炎となっております。

ロールスクリーンにおいては、国内で初めて上市した1980年当初から「全柄防炎」で展開しております。「全柄防炎」であることを商品政策上の基本として、防火対象物に限らず一般住宅を含めて、広く、安全・安心な防炎性能を有したロールスクリーンを提供していく、人にやさしい住環境の提供が上市当初からの基本となっており,木製ブラインドも輸入材含めて「全樹種防炎」での商品展開・提供が求められるところです。

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◈大阪北新地の心療クリニックの痛ましい火災事故からこの12月17日で2年が経ちます。いつもこの時期になると、26名の尊い命が犠牲になったことが思い出され・・・窓回り商品の「防炎のあり方」が頭を過(よ)ぎります。安全・安心を最優先させていくことの大切さを痛感させられた火災事故であり、今年も又、昨年同様に、木製ブラインドの防炎対象物品認定と全樹種防炎に向けての問題提起をさせていただいた次第です。

***インテリア技術開発研究所・「BLOG・インテリア余話」***