海外生産・調達企業の「仕入単価DI」が上昇・収益力の悪化へ  - – – 生産・調達拠点の再構築に向けて – – -    

円安・ドル高や輸送費増により、企業の原材料・商品の仕入単価の変化を示す「仕入単価DI・Diffusion Index」が海外生産・調達企業において高くなっており、収益力悪化の要因となっております。原材料・商品の安定的調達難や輸入コストの増大から、生産・調達拠点を海外に移した企業の国内回帰・国産回帰が増えており、特に中国からの生産拠点の移転が増えております。

1)原材料・商品の輸入コストの増大等による収益力の悪化・・・   

円安や地政学的リスクの高まり等を背景に、海外からの安定的な原材料・商品等の調達に支障が出たり、円安による輸入コストの増大や輸送費増による売上原価率の悪化等、収益力の改善・収益基盤の強化が喫緊の経営課題となっております。  

2022年より円安・ドル高傾向が続いており、2024年1月~5月の月中平均為替相場は1ドル=151,03円を記録し、5月の月中平均は156,22円の歴史的円安となり、円安・ドル高の流れに歯止めがかかっておりません。(下表参考資料①を参照)

独立行政法人・中小企業基盤整備機構による「仕入単価DI・2024年3月29日調査」によれば、建設業で74,0%、製造業で67,8%となっており、円安による原材料価格の高騰、仕入価格の高止まりが続いております。特に海外生産・調達企業においては、円安による輸入コストの増大や輸送費増の影響が大きく、収益力悪化の要因となっております。(下表参考資料③を参照) 

日本インテリア協会の「市場規模の策定」調査によると、2022年度の輸入カーテンは535億円、構成比で52,6%となっており、財務省貿易統計によると、輸入カーテンの約70%が中国からの輸入となっており、円安による輸入コストの増大や輸送費の上昇等による収益力の悪化等、企業業績への影響が大きいものと考えられます。(下表参考資料②を参照)

2)「国内回帰・国産回帰」海外の生産・調達拠点の見直し・再構築へ・・・

(株)帝国データバンクによれば、海外の生産・調達拠点を国内へ回帰、国内生産へ変更した企業が増えており、特には「建設」、「繊維・繊維製品」で割合が高くなっております。安定的な調達の難しさや輸入価格・輸送費の上昇等により、今後も「国内回帰・国産回帰」を検討・実施する企業が増えてくるものと想定されます。

2030年に向けて、室内装飾事業を取り巻く経営環境は一段と厳しくなり、カーテン等窓回り商品市場の縮小等が予測される中で、高度技術化や高度デザイン化、他品種小ロットや短納期対応等々、多様化するニーズにどう応えていくか・・・海外生産・調達のあり方を今一度見直して、国内生産・国産回帰のあり方を再構築するときではなかろうかと考えられます。

海外生産・調達はこれまでの「コストパフォーマンス」から・・・「消費地生産」へと軸足を移し、海外市場に目を向けた海外移転が中心になっていくのではと予測されます。

参考資料① 2000年~2024年・USドル/円の為替レートの推移 

◈出所:年間為替レート、IMF Data等より引用・作成。*2024年は1月~5月の月中平均。

2000年2005年2010年2015年2020年2021年2022年2023年*2024年
ドル/円107,77110,2287,78121,04106,77109,75131,50140,49151,03

参考資料② カーテンの市場規模・輸入カーテンの推移(単位・億円) 

◈出所:日本インテリア協会「市場規模の策定」より引用・作成。( )内%は構成比、単位は億円。

2010年度2015年度2018年度2020年度2021年度2022年度
輸入品222(20,1%)272(24,1%)502(47,8%)502(50,4%)475(49,3%)535(52,6%)
国産品884(79,9%)855(75,9%)549(52,2%)494(49,6%)489(51,7%)483(47,4%)

参考資料③ 復航(中国⇒日本コンテナ運賃の推移(年平均、単位はUSドル) 

◈出所:日本海事センター・企画研究部「復航(中国⇒日本)コンテナ貨物の荷動きの動向」より引用・作成。

上海⇒横浜2020年(前年比)2021年(前年比)2022年(前年比)2023年(前年比)
20ftコンテナ713(111,6%)993(139,3%)1,080(108,8%)791(73,2%)
40ftコンテナ1,100(107,7%)1,628(148,0%)1,868(114,7%)1,329(71,1%)

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所***