月: 2022年12月

提言:木製ブラインドの「防炎物品」認定に向けて・・・

「大阪・北新地の心療クリニック」の痛ましい事故からこの12月17日で一年が経ちました。・・・火災からの痛ましい事故を未然に防ぎ、安全・安心を最優先していくことの大切さを痛感させられた事故であり、改めて回り商品の防炎のあり方を考えさせられた事故でありました。---此のBLOGでは現行の木製ブラインドの防炎問題に関して、改めて取り上げてみたいと思いますーーー

◈木製ブラインドが好調で、2021年度の市場規模は61,4億円・・・NIFの2021年度の「市場規模の策定」によると木製ブラインドは年々市場規模を拡大しており、木の持つ温もり感・高質感・高級感が好まれ、タワーマンション等高層建築物を始めとして、住宅・非住宅市場ともに広く取り付け、使用されるようになってきました。ーーーしかし現行の木製ブラインドは「防炎製品」としての認定であり、カーテン、ロールスクリーンのように「防炎物品」とはなっていませんーーー

◈現行の木製ブラインドは「防炎製品」としての扱いであり・・・「防炎製品」は「防炎物品」と違い、消防法第8条の3,消防法施行令第4条の3で定められている防火対象物への取り付け・使用義務はなく、防炎性能を有していない非防炎の木製ブラインドが住宅・非住宅市場を問わず、広く出回ってはいないか懸念されます。もちろん取付・施工現場では消防法で定められている防火対象物には防炎製品である「木調樹脂製ブラインド」の取り付けを薦められていることと思います。

◈『木製ブラインドが「防炎物品」として認定されないのは・・・現行の『消防法施行令で定める「布製ブラインド」ではないから・・・』との事由のようですが、もしそうであるとすれば、消防法施行令が定められたのは実に昭和36年であり、当時は布製ブラインドも輸入品など一部の商品しかなく、木製ブラインドもない時代であり、制定当時から比べると窓回り商品市場は大きく様変わりしております。ブラインドを構成する素材もポリエステル等の繊維素材や紙、木材、樹脂材等々多岐にわたっており、消費者の生活様式や嗜好が様変わりした令和の時代にあっては、火災からの痛ましい事故を防ぐ、安全安心を最優先として・・・市場の実態等に見合った消防法施行令の見直し等が時代の要請ではなかろうかと考えられます。

◈大阪・北新地の心療クリニックの痛ましい火災事故から一年が経ち・・・火災からの痛ましい事故を防ぐ、安全・安心を最優先していくことの大切さを痛感させられた事故から一年が経ちました。非防炎の木製ブラインドは天然木ゆえ、火が着くと激しく燃え上がり、大変危険であり、タワーマンション等の高層建築物を始めとして「防火対象物」には防炎性能を有する防炎物品としての木製ブラインドの取り付け・使用を法的に義務づけ出来るよう、現行の布製ブラインド同様、木製ブラインドも防炎物品としてのカテゴリーで括れるよう・・・改めての再考を関係省庁、関係機関等にお願いするところであります。

ーーーインテリア技術開発研究所「BLOG・インテリア余話」よりーーー

森林資源の循環利活用による『木製ブラインド・木製カーテンレールの材料調達から~製品化のあり方』について

2022,12,7に開催された日経SDGsフォーラム「森林、木材の利活用で実現する脱炭素社会」において、林野庁長官・織田 央氏、速水林業代表・速水 亨氏による基調講演がありました。これからの森林資源の循環利活用に関する大変重要な講演内容であり、内容を一部引用させていただきながら、『これからの木製ブラインド、木製カーテンレールの材料調達~製品化のあり方』について、次の通り述べさせていただきたいと思います。

1,持続可能な開発の重要性について(Sustinable Development)

「資源の持続性」と「環境の持続性」を考慮した節度ある開発が重要である。

ーーー1990年代の木製カーテンレール・ラミン材の教訓からーーー

1990年代はWT商品市場は全盛期を迎え、1996年度には新設住宅着工戸数は163万戸と2021年度対比で約2倍近い着工数となり、リビング等では木製レールがトレンドとなり、ラミン材の輸入は過去最高となりました。

ラミン材は低コストで、節がなく、色が白く、塗装が容易ということで、日本人の嗜好に良く合い、構造材を始めとして内装材や装飾材に多く使われ大量に消費されました。

一方で原産国であるインドネシアでは毎年150万~200万haの森林破壊が進み、2020年迄にカリマンタン島の森林は消滅するといわれ、2001年8月インドネシア政府はラミン材の伐採を禁止するに至りました。

これを機として、木製カーテンレールの需要は坂道を転がり落ちるかの如く,市場は冷え込んでいき、当時はSDGsの概念など希薄な時代であり、環境保全を考慮せず、経済合理性のみを追求した先進国のエゴそのものの結果といえます。

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2,EGOから~ECOへ・・・これからの『住と木のあり方』について

基調講演の中で、速水代表は『「自然との共生」と「地域との共生」の二つの共生が重要であり、サステナブルであってこそのSDGsである』と述べられており、現行の木製レールや木製ブラインドにはバスウッド材やビーチ材など北米産の木材が使われており、カナダといえば「森林王国で北米材は永遠に大丈夫である」という思いが強いが、実はそうではなく、既に森林資源が枯渇してきている状況にあるとのことであり、今後は第2のラミン材とならないよう注視していく必要があります。

国産材の需要ということでは、官民挙げての持続可能な循環型の森林経営の取り組みが進んでおり、低層住宅における国産材の利用拡大は今後ますます増加していくものと考えられています。(林野庁によると低層住宅の木造率は約80%,使用木材の約50%が輸入材とのことである)

高層建築物においても木材利用が進んでおり、竣工済みではロイヤルパーク札幌大通公園(11階建)やプラウド神田駿河台(14階建)があり、計画中のオフイスビルでは東京海上・新本店ビル(20階建)や東京京橋の第一生命ビル(12階建)があり、今後木造のビルやホテル建設が増加するものと考えられます。

内装インテリアにおいても国産材の利用拡大・需要拡大が進むものと考えられ、これからの木製ブラインド、木製カーテンレールにおいては、森林資源と環境の持続性に配慮した材料調達~製品化がますます重要になってくるものと考えられます。

消費者のSDGsへの関心が高まり持続可能な地球環境や社会づくりに向けての企業責任が問われる中にあって、サステナビリティな経営姿勢やものづくりの「見える化」への取り組み強化が今後ますます重要になってまいります。

ーーーインテリア技術開発研究所「BLOG・インテリア余話」よりーーー

カーテン&メカモノのこれまでとこれから・・・

これまでの「窓とカーテン」の歴史の中で、カーテン市場の新規開拓・需要拡大の節目節目で、カーテンレールがエポックメーキングの役割を果たしてきております***カーテン市場の立て直し・新規需要の掘り起こしに向けて、カーテンレールが今一度、新たな牽引役を果たすときです***

日本インテリア協会の「市場規模の策定」調査によると、カーテンは年々市場規模を縮小し、2021年度の市場規模は1,000億円を割り込み、964億円までに落ち込みました。一方で、メカモノの2021年度の市場規模はスクリーン類366億円+ブラインド類306億円=計672億円と、年々市場規模を拡大しており、今回のBLOGでは「カーテンおよびロールスクリーン等繊維系WT商品のこれまでとこれから・・・」について、次の通りお届けさせて頂きます。

1,カーテン等繊維系WT商品の市場規模動向(NIFの調査資料より引用作成)単位;億円

2010年度2015年度2020年度2021年度2021/2010
カーテン         1,106 1,127 99696487,2%
ロールスクリーン 196 236263263134,2%
ローマンシェード 68 60484566,2%
プリーツスクリーン 52 576057109,6%
バーチカルブラインド 58 646072124,1%

繊維系WT商品・計

1,480

1,544

1,436

1,401

94,7%

2,カーテン市場のこれまでとこれから・・・

1)カーテン市場のこれまでと今後の課題等

2021年度のカーテン市場は964億円と年々の市場規模縮小に歯止めがかからず、2010年度対比では87,2%、この10年余りの間で▲142億円もの市場規模縮小をきたしており、カーテン市場縮小への歯止め対策やカーテン産地の活性化等が喫緊の経営課題となっておりますが・・・

業界挙げて「何とかしなければ・・・」という問題意識や需要喚起に向けての動きが見られない、声が聞こえて来ない中にあって、カーテンレールメーカー等を始めとしたカーテン市場の立て直し、新たなメカ機構の研究開発による戦略の再構築が求められるところです。

2)新たなメカ機構開発によるカーテン市場の立て直しに向けて

これまでの「窓とカーテン」の歴史の中で、節目節目でカーテンレールがエポックメーキングの役割を果たしてきております。(要点部分のみ抜粋)

◈戦後のカーテンロッドの時代から・・・金属製レール、樹脂製レールが発売され、広く普及してくると、これまでのカーテンロッドの時代から「カーテンレールにカーテンを吊す」というスタイルが普及、定着していき、一枚モノの窓掛けの時代から~ヒダを取り、プリーツスタイルのカーテンへと市場は大きく様変わりしていきました。

◈工事用カーテンレールでは・・・「Wブラケット」が多く使われるようになり、店頭では「伸縮カーテンレール・Wセット」が爆発的に売れ、「ドレープ+レースカーテン」のダブル付が広く普及、一般化していきました。

◈スタイルカーテンがトレンドとなると・・・カーテン市場はスタイル・デザインを競い合い、装飾性レールや出窓専用レールが広く使われるようになり、スタイルカーテン全盛の時代となりました。  

1990年代には装飾性レール全盛の時代へ・・・「木製カーテンレール」がトレンドとなり、装飾性カーテンレールの全盛期を迎え、カーテンおよびカーテンレール市場規模はこれまでの最大を記録しました。

このように、時々の市場変化や顧客のライフスタイルの変化等に適時・適宜に応え、仕掛けていったのは、先ずはメカ機構の開発ありきであり、カーテンレールと本体であるカーテンファブリックスが上手くコラボしあって、新規市場の掘り起こし、需要拡大に繋げていったという見方が出来ます。

これら歴史上の成功事例をベンチマーキングとして、明日の「ものづくり」を担う政策スタッフの皆様に期待したいのは・・・近年の窓の形状変化や顧客のライフスタイルの変化に対して、新たな発想による革新的なメカ機構の開発等による窓の装い方や需要拡大策であり、例えば、顧客の皆さんから問い合せの多いスリット窓やFIX窓の装い方の研究やメカ機構の開発や、ハイサッシ・ワイドスパンの窓にはパネルスクリーンの普及拡大策なども研究開発の対象として・・・カーテン市場の活性化に向けて新風を吹き込んでいただけるよう期待しております

3,ロールスクリーン等メカモノ市場のこれまでとこれから・・・

ロールスクリーンは2021年度/2010年度対比では134,2%と大幅な市場規模拡大を図っており、バーチカルブラインドも窓のハイサッシ化等により124,1%と堅調に市場拡大を図ってきております。

メカモノにおける中長期的政策課題としては・・・窓の形状とWT商品の相性変化や窓回りの電動化等スマートな暮らしぶりへの対応力強化や、消費者のSDGsへの社会的関心が高まる中、環境配慮型商品の強化や社会貢献に繋がる「ものづくり」等が求められ、これまでのメカモノの好調さに甘んじることなく、顧客要望に寄り添った顧客優位・市場提案型の商品開発や情報・サービスの提供がますます重要になってまいります。

ロールスクリーン等のメカモノの中長期展望と具体的な重点政策課題の詳細等については、当研究所発行の「WITHコロナ時代のものづくりの方向性を探る」を参照ください。

ーーーインテリア技術開発研究所「BLOG・インテリア余話」よりーーー

  カモノ市場のこれまでとこれから・・ロールスクリーン等メカモノ市場のこれまでとこれから・・・ロールスクリーンは2021年度/2010年度対比では134,2%と大幅な市場規模拡大を図っており、バーチカルブラインドも窓のハイサッシ化等により124,1%と堅調に市場拡大を図っております。