上場企業各社の2022年度決算発表が出揃いましたので、「決算概況対比一覧」にまとめ、お届けします。2022年度の住宅着工戸数は86万828戸、前年同期比0,6%の減少と、この10年間で下から2番目に低い着工戸数となっており、円安傾向や原材料価格の高騰等、室内装飾事業を取り巻く経営環境は先行き不透明感が続く中での・・・各社決算発表となったようです。
1,上場企業各社決算対比一覧(連結)
| 決算期 | 売上高 | 前年比(%) | コロナ前比(%) | 営業利益 | 備考 |
サンゲツ | 2023年3月期 | 176,022 | 117,8 | 109,2 | 20,280 | |
東リ | 2023年3月期 | 95,230 | 107,6 | 101,6 | 3,531 | |
リリカラ | 2022年12月期 | 33,253 | — | — | 1,622 | 注 |
立川ブラインド | 2022年12月期 | 41,296 | 100,1 | 98,2 | 3,822 | |
トーソー | 2023年3月期 | 21,298 | 102,1 | 93,9 | 719 | |
注・単位:百万円。
・コロナ前比(%)とは新型コロナ前の2019年度対比で、売上高の回復状況を表す。
・リリカラは収益認識に関する会計基準等を当事業年度の期首より適用のため、対前期増減率の記載なし。
・住江織物は2023年5月期決算のため、発表は7月となります。
2,経営成績の概況等(決算短信等より引用・作成)
サンゲツ
①連結決算は・・・176,022百万円(前年比17,8%増)、営業利益20,280百万円(前年比154,8%増)となった。
②セグメント業績・インテリアセグメントでは・・・壁装事業においては住宅向け量産壁紙「SP」や、非住宅向け不燃認定壁紙「FAITH」等が好調で、売上高は73,503百万円(前年比17,9%増)と大幅に伸長した。床材事業においても住宅、非住宅で幅広く使えるビニル床タイル「フロアタイル」等の売上が好調で、床材売上高は52,154百万円(前年比10,5%増)と伸長した。ファブリック事業ではカーテン市場全体に縮小傾向が見られ、厳しい環境となったものの、カーテン見本帳「ストリングス」が売上を牽引した。新見本帳「AC」においては上代価格の改定を行い、収益性の改善を図った。ファブリック事業の売上高は9,514百万円、前年比10,5%増の売上となった。
以上より、インテリアセグメントにおける売上高は141,949百万円(前年比15,4%増)、営業利益20,504百万円(前年比125,4%増)と大幅に伸長した。
東リ
①連結決算は・・・売上高95,230百万円(前年比7,6%増)、営業利益3,531百万円(前年比302,2%増)となった。
②セグメント業績・プロダクト事業では・・・売上高57,971百万円(前年比10,3%増)、セグメント利益2,344百万円(前年比334,8%増)となった。新商品を中心としたプロモーション活動の強化と5月以降の販売価格改訂に注力した結果、売上高は大幅に伸長した。利益面では製造原価低減活動等により収益改善が進んだが、原材料価格の高止まり等予断を許さない状況が続いている。カーテンでは10月に発売した医療・福祉施設向け「コントラクトカーテン」について、回復基調にある医療福祉市場に向けた販促活動を強化したが、・・・カーテン全体の売上高は前年を下回る結果となった。ビニル系床材、カーペット、壁装材は好調で前年を大幅に上回る売上高となった。
リリカラ
①連結決算は・・・売上高33,253百万円、営業利益は1,622百万円(前年比206,3%増)となった。
②セグメント業績・インテリア事業では・・・2021年12月期から~2023年12月期までの中期経営計画[daaS・ダース」による新たなビジネスチャンスの取り込みと事業構造の変革に取り組んできた。インテリア事業においては、壁装材は全物件向けの準不燃・不燃ビニル壁紙見本帳「ライト」を発行。床材では見本帳「クッションフロア」を発行したほか、カーテンでは見本帳「アンドタイム」、「サーラ」を増刷発行し拡販に努めた結果・・・売上高は27,339百万円、セグメント利益1,679百万円(前年比274,5%増)となった。
立川ブラインド工業
①連結決算は・・・41,296百万円、営業利益3,822百万円(前年比16,1%減)となった。
②セグメント業績・室内外装品関連事業では・・・生活様式や働き方が大きく変化する中、多様化するニーズに応じたより安心・安全で快適な住空間づくりをめざし、顧客満足度の高い製品の開発、及び新製品の市場浸透に注力してきた。スマートで便利な暮らし提案としての「住宅向け電動カーテンレール」や、プリーツスクリーンのリニューアルやハニカムスクリーン等、窓回りの断熱による省エネ効果に優れた新製品を投入した。10月には調光ロールスクリーンのリニューアルや電動木製ブラインド「フォレティア電動」のラインアップ拡充を行い、新製品の市場導入により需要の活性化を図ると共に、対面とオンラインを使い分けた販促活動による市場浸透に努めてきた。・・・売上高は34,000百万円(前年比0,7%減)となり、営業利益についてはコスト低減活動や一部製品の価格改定等の収益改善に努めたが、3,279百万円(前年比18,1%減)となった。
トーソー
①連結決算は・・・売上高21,298百万円(前年比2,1%増)、営業利益719百万円(前年比8,3%減)となった。
②セグメント業績・室内装飾関連事業では・・・新製品の発表に加え、「トーソーウインドウファッションフェア」や,[with Curtains」のイベント開催等営業活動の強化を行った。非住宅分野や海外での販売が前期を上回ったことや、カーテンレールの価格改定の寄与もあり、・・・売上高は20,860百万円(前年比1,9%増)となり、セグメント利益は原材料の高騰や営業活動費の増加等が影響し、702百万円(前年比8,7%減)となった。
3,各社決算と新型コロナ前のWT商品市場の回復状況等・・・
①新型コロナ前の2019年と2021年度のWT商品市場の回復状況は・・・カーテンは2019年度の1,030億円から⇒2021年度は964億円、2019年度対比で93,6%、カーテンレールは同205億円から⇒192億円、2019年度対比で93,7%とコロナ禍前との乖離が大きい状況が続いております。一方、メカモノはブラインド類(ヨコ型+タテ型)が102,3%、ロールスクリーンが98,1%の市場回復となっています。(数字はNIFの「市場規模の策定」調査報告より引用・作成)
②壁装、床材における新型コロナ前の同市場回復状況は・・・壁紙が101,8%,プラスチック系床材が106,9%の市場回復となっております。
◈◈◈2022年度の各社決算においては・・・カーテン、カーテンレール市場と壁装、床材市場の回復状況の違いが各社決算に影響したものと考えられます。カーテンはこの10年来、年々市場規模を縮小しており、2011年度の1,094億円から⇒2021年度は964億円、2019年度対比で88,1%と、実に130億円もの市場規模縮小となっています。
メカモノが大きく市場規模を拡大してきた中にあって、カーテン市場縮小への歯止め対策やカーテン産地の活性化は喫緊の経営課題であり、業界挙げての取り組みが求められるところです。・・・これまでの「BLOG・インテリア余話」の中でも再三にわたって問題提起させて頂いておりますが、改めて次回以降において、カーテン市場の活性化問題等を取上げていきたいと考えております◈◈◈
ーーーインテリア技術開発研究所「BLOG・インテリア余話」よりーーー