月: 2023年9月

多様化するニーズと窓回り商品(Series-3)・・・ロールスクリーン等メカモノ商品の~これからの10年~

この10年来、カーテン市場が縮小する中で、メカモノは堅調に市場規模拡大を図ってきております。このSeries-3ではメカモノ商品の~これからの10年~をどう展望していくか、商品&販売領域に関わる政策課題等について取り上げてみたいと思います。

1,メカモノ及びカーテンのこれまでの市場規模動向等(2021年度/2010年度対比

          2010年度(億円)2021年度(億円)  2021/2010年対比 備 考 
ロールスクリーン   196 263 134,2%  67億増
ベネシャンブラインド 197 234 118,8% 
バーチカルブラインド 58 72 124,1%
プリーツスクリーン 52 57 109,6%
ローマンシェード 68 45 66,2%
   メカモノ合計 571  671 117,5% 100億増
カーテン 1,106 964 87,2%142億減
カーテンレール 198 192 97,0%
                            *NIF「市場規模の策定」より引用・作成

◈概況等・・・

2021/2010年度対比での市場規模動向では、カーテンが87,2%、142億円減と大きく市場規模を縮小しているのに対して、メカモノは合計で117,5%、100億円増と市場規模を拡大しております。

ロールスクリーンは134,2%、バーチカルブラインドは124,1%、ベネシャンブラインドは118,8%と年々堅調に市場を拡大してきていますが、プリーツスクリーンは近年伸び悩みが見られ、ローマンシェードは新型コロナ後の縮小傾向が続いています。 

2,これからの~室内装飾事業を取り巻く経営環境・・・

新設住宅着工戸数は・・・先の国交省発表の2023年7月の新設住宅着工戸数は6万8,151戸、前年同期対比△6,7%減、季節調整後の年率換算では77万8,000戸、前年比△4,1%減と80万戸を割り込む数字となっており、野村総研等研究機関による推計予測では2030年度には新設住宅着工戸数は74万戸時代へ が現実のものとなってきております。住宅着工戸数・開口部(窓)の減少は窓回り商品市場への影響が大きく、新築需要依存の経営基盤の見直しが求められることになります。

2030年はSDGs開発目標達成の年であり、ZEH基準が義務化される年であり、サステナブル志向社会元年と位置づけできるかも知れません。窓は「高断熱窓・遮熱窓」が普及・一般化し、消費者の嗜好や生活様式が変化し、窓辺の新しい装い方や新たな機能やスマートな暮らしぶりが求められる時代になっていくものと考えられます。

3,メカモノ商品のこれからの10年~・・・求められる重点政策課題等

メカモノ商品は671億円市場を形成するまでになり、住環境・住生活への影響は大きく、これからの10年~はサステナビリティ経営を中心に据えた、社会課題に対応した商品・サービスの提供が求められ、持続可能な社会に如何に貢献していくかが問われる時代となっていくものと考えられます。

一方では、ロールスクリーン等メカモノも上市以来40年を越え、近年はその勢いに陰りが見えます。メカモノは製品寿命が短い、メカ部の故障やスクリーン、スラット部のトラブルが多いなど、商品そのものへの顧客の信頼性を損なうことのないよう、より高質な商品・サービスの提供、提案力が求められる時代でもあります。

紙面の都合上一部抜粋になりますが、商品及び販売領域に求められる重点政策課題としては、次のようなことが考えられます。

1)商品に関わる政策課題等(一部抜粋)

           政策課題の概要・目標等                            
サステナブル商品化率の強化           環境配慮・循環型商品・サービスの提供による持続的な社会の発展への貢献ーリサイクル素材活用による商品開発の拡大強化。ロールスクリーン等売れ筋無地群を中心とするサステナブル商品化率の強化。中長期数値目標の設定(例えば「サステナブル商品化率60%超」を目標とするなど) 
3Rを基本とした商品開発メカモノ商品の単純埋立による産業廃棄物の削減ー商品企画・設計段階から「回収・分別・廃棄・リサイクル」課題解決を開発要件として、基本設計の段階からおり込んでいく。埋立廃棄物の中長期削減目標の設定。
スマートインテリア時代への商品力強化スマートハウス化、スマートホーム化への電動窓回り商品の対応力強化ーIoTを主軸とした利便性、快適性、安全性等、スマートな暮らしぶりを追求した商品・システムの提供.HEMSに対応したシステムの拡充強化。
木製窓回り製品の国産材の利活用の拡大木製ブラインド等木製窓回り製品は「資源の持続性」と「環境の持続性」を考慮した材料調達~製品化が求められ、官民挙げての循環型の森林経営への取り組みとあわせた国産材の利用拡大、需要拡大。
取付・使用環境に即した実証実験体制の強化ロールスクリーン等の外観特性・経年劣化に関わる評価・検証スキルの強化ー取付・使用環境の再現による実証実験体制の強化。外観欠陥による不平・不満・苦情の解消と消費者に信頼される、より良い 安全・安心な商品・サービスの提供。

2)販売に関わる政策課題等(一部抜粋)

                   政策課題の概要・目標等
窓辺の新しい装い方提案     「高断熱窓・遮熱窓」の普及・一般化と消費者の嗜好や生活様式の変化に対応した窓辺の新しい装い方や新しい機能やスマートな暮らしぶり提案やサービスの強化。
スマートインテリア時代への専門的知識の強化スマートハウス化、スマートホーム化に対応し得る電動商品に関する専門的知識・サービスの強化ー専門店、IC、窓装飾プランナー等の皆様の電動商品・システムに対する専門的知識の習得・向上とスマートな暮らしぶり提案やサービスの提供による顧客との信頼性向上、ビジネスチャンスの拡大。
自社・自店優位の顧客の囲い込み戦略の強化自社・自店の強みを活かした顧客の囲い込み戦略の強化ーSPA・製造物流IT小売業の事業戦略をベンチマーキングとした自社・自店の強みを活かした地域密着・顧客直結型の顧客の囲い込みと信頼性強化。
メカモノ・スクリーン類の専門的知識の向上と高質な商品・サービスの提案力強化メカモノ・スクリーン類の外観特性と経年劣化に関わる知見向上ー顧客との信頼性強化に向けて、取り付け・使用環境に適したメカモノ商品の提案力の強化と、より良い 安全・安心な商品・サービスの提供

3,参考資料、情報・・・これまで配信してきました下記の[BLOG・インテリア余話」もあわせてご参照ください。

●2023年8月18日配信 窓回り商品の今後の方向性等 ●2023年7月22日配信 窓の更なる深化と窓回り商品 ●2023年2月23日配信 ロールスクリーン、ブラインド等「メカモノ」における今日的課題 ●2022年12月14日配信 森林資源の循環利活用による「木製ブラインド・木製カーテンレールの材料調達から~製品化のあり方」について ●2022年11月22日配信 ロールスクリーンの製品保証と外観特性の関わりについて ●2022年10月3日配信 ロールスクリーン・バーチカルブラインドの外観特性と経年劣化について他

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所***     

ニトリグループのサステナビリティと地域密着型の顧客の囲い込み戦略等『統合報告書・2023』

ニトリグループより「統合報告書・2023」が発表されました。製造物流IT小売業の特性を活かした地域密着・顧客直結によるお客様の快適な暮らしの実現と環境・社会課題の解決を同時に果たしていくとされています。

1,ニトリグループによる顧客直結型の「ものづくり」と商品・サービスの提供・・・

SPA:製造物流IT小売業の特性を活かした、顧客直結型の「ものづくり」戦略による「より専門化・より高質化」された商品・サービスの提供が今後ますます強化されてくるものと考えられます。

中期経営戦略では「事業領域の拡大と顧客の支持獲得」が掲げられています。徹底した市場調査と顧客の「不平・不満・苦情」等の店舗からの情報を迅速かつ確実に商品やサービスの改善・提供に結びつけるという「ものづくり」に対する経営姿勢は今後ますます顧客の信頼醸成に繋がっていくものと考えられます。

2,サステナビリティとの両立をめざした商品・サービスの提供・・・

中期経営戦略の中では、商品の企画・設計段階から資源の有効活用を見据えた、分別し易い構造、再資源化し易い原材料の使用等による商品開発をめざしていくとされています。

製造段階ではムダのない材料の使用、リサイクル原材料を使用し、限りある資源を守っていくということであり、

販売面においては「商品のリサイクル回収」として・・・お客様からの「処分に困っている」という声が多いものを中心に、販売元や状態に関わらず店頭で無料回収し、資源に繋げる取り組みを推進していくということです。

カーテンのリユース・リサイクル回収の常時受付・全国規模での展開など、国内773店舗での地域に密着した顧客の囲い込みが進んでおります。これらニトリグループのサステナブル戦略は今後ますます全国規模での支持拡大、顧客の囲い込みに進んでいくものと考えられます。

◈◈◈室内装飾事業を取り巻く経営環境とサステナビリテイ・・・サステナビリティ経営戦略にもとづく社会的課題の実現や環境配慮型・資源循環型の商品・システムの提供は時代の要請であり、これまでの「BLOG・インテリア余話」の中で「カーテンのリサイクル事業の拡大強化」や、2023年2月23日配信の「ロールスクリーン、ブラインド等メカモノが抱える今日的課題」の中では、商品の企画・開発・設計段階から「回収・分別・廃棄・リサイクル」問題を開発要件として基本設計の段階から織り込んでいくことの重要性を提案してきておりますが、

これらニトリグループの動きをベンチマーキングとして、自社・自店の戦略、強みをものづくりや販売面で如何に活かしていくか・・・地域に密着した顧客の支持拡大・信頼醸成を如何に図っていくかが・・・2030年に向けての最重要・優先課題ではなかろうかと考えられます◈◈◈

***[BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所***