月: 2023年12月

樹脂窓やアルミ樹脂複合窓等 窓の省エネ・高断熱化が進んでおり・・・カーテン等WT商品市場は新しい装いや機能が求められる時代へ・・・ 

先の国会で「先進的窓リノベ事業」2024年度予算が可決・承認され、補助金総額は1,350億円に増額されることになり、2023年度に引き続き2024年度も内窓設置や外窓交換による窓の省エネ・高断熱化が更に普及、加速されることになります。

1,窓の脱アルミ化・高断熱化が急速に進んでおり・・・  

窓の更なる深化とともに、窓回り商品市場は新しい装いや機能が求められる時代へ・・・

1)2023年12月15日現在の「先進的窓リノベ事業」2023年度の補助金申請状況は・・・

戸建住宅86%、集合住宅96%となっており、内窓設置、外窓交換が普及、拡大しております。こどもエコすまい支援事業は9月28日時点で申請限度額100%に達しております。(経産省、環境省発表より)

2)日本サッシ協会の2023年3月版「住宅用建材使用状況調査」の発表によると・・・

戸建住宅における窓の材質構成比は「アルミ複合サッシ」が63,3%、「樹脂サッシ」が28,5%となり、高断熱サッシ(アルミ樹脂複合製、樹脂製、木製)の構成比が91,9%にまで達したということであり、窓の脱アルミ化・高断熱化が急速に進んでおります。

3)YKK APの中期目標によると・・・2030年度には「窓の高断熱化100%」をめざす

YKK APの中期目標ではアルミ窓は年々減少し、2030年度にはアルミ樹脂複合窓30%、樹脂窓50%、木製窓20%を目標に掲げ、窓の高断熱化100%をめざすとなっております。2024年度には木の持つ断熱性や、豊かな質感をそなえた「木製窓」の開発・販売が予定されております。

4)「先進的窓リノベ事業」2024年度予算が国会で可決され、1,350億円に増額されました・・・

先の国会で「先進的窓リノベ事業」2024年度予算が可決・承認され、内窓交換や外窓交換等の補助金総額は2023年度の1,000億円から~2024年度は1,350億円に増額されることになり、窓の省エネ・断熱化が一層進むものと考えられます。

5)2030年にはZEH基準が義務化され、窓の高断熱仕様の新築住宅が標準となります・・・

2025年には全ての建築物・住宅は省エネ基準の適合が義務化されます。2030年にはZEH水準(創エネを除く断熱、省エネ性能のクリア)に引き上げられます。2030年に向けて、窓はアルミ窓から樹脂窓・木製窓へ、窓の深化とともに窓回り商品市場は新たな装い方や機能が求められる時代へ向かっていくものと考えられます。

2,窓辺の装いや消費者の嗜好・生活様式は・・・ 

より(S)シンプルに、(S)スマートに、(S)サステナブルな方向へ・・・

樹脂窓(塩化ビニル)はアルミの1/1000の熱貫流率であり、断熱性能が高く、アルミ窓と比較して*コールドドラフト現象が起こりにくく、断熱窓のある冬の窓辺は足元が暖かく室内環境は大幅に改善されます。窓回り商品に対する遮熱・断熱・遮光への消費者の要望・こだわりは、従来型の厚い、重たいドレープや暗幕イメージから~窓辺はよりスッキリ・シンプルに、スマートに、サステナブルな方向、装い方に軸足を移していくのではないかと考えられます。(*コールドドラフト現象とは・・・冬場に冷たい窓ガラスからの冷気が暖かい室内に流れ込み、足元が冷える現象をいう)

断熱窓の普及拡大等「窓の更なる深化」とともに、働き方やお家時間の過ごし方など消費者の嗜好や生活様式が様変わりしていくのと相俟って、スマートな暮らしぶりや窓辺の新しい装い方や機能が求められるようになり、

これら時代の変化・要請をどう捉え、自社の強みとしていくか・・・サステナブルな商品の研究開発による人にやさしい窓回り商品の提案・提供や、シンプルに窓辺を装うハイブリット型機能商品の提案・提供や、窓辺の電動化によるスマートインテリアの提案・提供などなど・・・消費者の嗜好やライフスタイルに寄り添った新たな需要創造・拡大を図り、時代の変化・要請に応えていきたいものです。

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所***  

 

人と環境にやさしい窓回り商品<その3>・・業界を代表する各社の『統合報告書2023』より~環境・社会課題解決への取り組み状況等 

各業界を代表する、サンゲツ、立川ブラインド、YKK AP,ニトリの「統合報告書2023」の発表が出揃いました。各社ともマテリアリティ(重要課題)の中で、環境・社会課題解決に向けた取り組み強化が掲げられています。各社の同事業への取り組み状況等について、次のとおりお届けさせていただきます。

◈サンゲツ、タチカワ,YKK AP,ニトリ各社の環境・社会課題解決への取り組み状況等

カーテン壁装業界、ブラインド業界、サッシ業界、製造小売業界を代表する各社の「統合報告書2023」における環境・社会課題解決に向けての取り組み状況は次のとおりとなっております。(下表参照・一部抜粋)

人と環境にやさしい持続可能な社会への貢献と企業価値向上は中期事業計画における最重要経営課題であり,ステークホルダーとの共創・協働による具体的成果の実現・積み上げが求められるところです。

 マテリアリティ等          取り組み状況等                目 標 等                     
サンゲツ商品のリサイクル 
見本帳リサイクル
サーキュラーエコノミー社会の実現、廃棄物の再資源化・有効活用、
サステナブル素材の有効活用
2025年度目標・・・
・単純処分の廃棄物量の削減2021年度比4%減
・リサイクル率(有効利用率)90%以上
・見本帳リサイクル冊数30万冊
(営業の回収分全量リサイクル)  
タチカワ     安心・安全・快適で環境に配慮した住空間の提供環境配慮型製品の  開発体制の構築と市場導入
技術研究棟の新設
・安心・安全・快適を基本とした製品の市場導入
・「技術研究棟」の活用による省エネ製品の
 研究開発やノウハウの蓄積、サステナブル
 製品のスピーディな開発と市場導入体制の構築
YKKAP  商品による社会課題解決と競争力の源泉となる「ものづくり」 商品・サービスによる社会課題解決への挑戦、新たな価値を創造し社会の持続的発展への貢献        2023年度 2024年度
・高断熱窓化率  84%     90%
・樹脂窓化率   35%     40%
・サステナブル
 商品売上比率  40,6%    39,1%
*サステナブル商品とは・・・環境省エネ、防災、安全安心、健康等SDGs達成に貢献する商品
ニトリ環境に配慮した
事業推進
原材料の余すことのない有効活用
技術革新による再生素材の有効利用
2030年度までに(国内事業対象)・・・
・廃棄物排出量30%削減
・産業廃棄物の資源化率95%以上
・企画設計段階から再資源化を見据えた商品開発
・商品梱包材の回収資源化の推進
・持続可能な木材調達の実現          
注:事業の詳細については各社「統合計画書・2023」を参照下さい。

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カーテン、布製ブラインドの防炎行政の歩みと木製ブラインドの「防炎対象物品」「全樹種防炎」に向けて     

近年、木製ブラインドが好調で、天然木の持つ質感、高級感が好まれ、タワーマンション等の高層建築物をはじめ、広く使用されるようになってまいりました。しかし、現行の木製ブラインドは「防炎製品」の扱いであり、カーテンやロールスクリーンのように、防火対象物への取付・使用が法的に義務づけられている「防炎対象物品」としての認定にはなっておりません。火災からの痛ましい事故を未然に防ぎ、安全・安心を最優先していくことの大切さから、現行の木製ブラインドにおける防炎問題について,次の通り取り上げてみたいと思います。

1,カーテン・布製ブラインドのこれまでの消防法施行令・法改正の歩みについて・・・

カーテン、布製ブラインドの消防法施行令・法改正の歩みは次のようになっております。(消防庁・防炎制度の沿革より一部抜粋)

●昭和36年・・・

消防法施行令が制定され、防炎対象物品が指定される。各市町村は火災予防条例で劇場、映画館、ホテル等公衆集会場で使用するカーテン等の防炎化を義務づける。

●昭和41年・・・

川崎市金井ビル火災(死者12名)、水上温泉火災(死者30名)において、カーペットの燃焼が問題視され、消防審議会において「高層建築物、地下街における防炎対策のあり方」として、カーテン等の防炎処理について配慮すべきことが答申される。日本防炎協議会が防炎カーテンに係る品質管理業務及び表示事業を開始。

昭和43年・・・

東京・浅草国際劇場火災(死者3名)、消防法の改正により消防法第8条の3の規定が制定される。

●昭和44年・・・

磐梯熱海温泉火災(死者30名)の痛ましい事故を受け、消防法施行令が改正され、新たにカーテン・暗幕等が「防炎対象物品」として指定される。日本消防検定協会が防炎カーテン等の鑑定を開始。

●昭和47年・・・

消防法施行令が改正され、新たに布製ブラインド、展示用及び舞台用合板、繊維板が「防炎対象物品」として追加される。

●平成19年・・・

日本防炎協会・防炎製品認定委員会において、木製等ブラインドが「防炎製品」として認定、開始される。

2,木製ブラインドの「防炎対象物品」認定に向けて

現行の木製ブラインドは「防炎製品」としての扱いであり、カーテンやロールスクリーンのように防火対象物への取付・使用が義務づけされている「防炎対象物品」としての認定にはなっておりません。

消防法施行令が制定されたのは昭和36年であり、昭和47年(1972年)の法改正により、布製ブラインドが「防炎対象物品」として新たに追加されてから~今日まで実に半世紀(50年)が経過しております。50年前当時から比べると、住環境も変り、窓回り商品も大きく様変わりし、ブラインドを構成する素材もポリエステルや、綿、ガラス繊維だけでなく、紙や竹、木材、樹脂材等々と多岐にわたっており、これまでのように消防法施行令で定める「布製ブラインド」では括れなくなっております。

現行の木製ブラインドは、カーテンやロールスクリーンのように防火対象物への取付・使用が法的に義務づけされている「防炎対象物品」ではなく、「防炎製品」としての扱いであり、高層建築物等防火対象物への取付・使用を推奨していくという扱いになっております。タワーマンション等防火対象物に非防炎の木製ブラインドが取り付け、使用されていることはないと考えておりますが、防炎性能を有した木製ブラインドの取付・使用を法的に徹底していく為にも「防炎対象物品」としての認定が待たれるところです。

3,木製ブラインドの「全樹種防炎」加工技術の確立に向けて・・・

現行の木製ブラインドは「全樹種防炎」ではなく、防炎性能を有するのは桐材や樹脂性木調ブラインドなど一部商品に限られております。市場の大半を占めるバスウッド等の輸入材の木製ブラインドは非防炎となっております。

ロールスクリーンにおいては、国内で初めて上市した1980年当初から「全柄防炎」で展開しております。「全柄防炎」であることを商品政策上の基本として、防火対象物に限らず一般住宅を含めて、広く、安全・安心な防炎性能を有したロールスクリーンを提供していく、人にやさしい住環境の提供が上市当初からの基本となっており,木製ブラインドも輸入材含めて「全樹種防炎」での商品展開・提供が求められるところです。

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◈大阪北新地の心療クリニックの痛ましい火災事故からこの12月17日で2年が経ちます。いつもこの時期になると、26名の尊い命が犠牲になったことが思い出され・・・窓回り商品の「防炎のあり方」が頭を過(よ)ぎります。安全・安心を最優先させていくことの大切さを痛感させられた火災事故であり、今年も又、昨年同様に、木製ブラインドの防炎対象物品認定と全樹種防炎に向けての問題提起をさせていただいた次第です。

***インテリア技術開発研究所・「BLOG・インテリア余話」***