WT商品市場を取り巻く経営環境の変化に どう向き合い 自社の強みとしていくか・・・ ブランディング力が問われる時代へ
2030年に向けて、窓回り商品市場を取り巻く経営環境は大きく様変わりしていくものと予測されます。これら経営環境の変化,社会課題にどう向き合い、自社の強みとしていくか・・・ブランディング力が問われる、重要な一年になりそうです・・・
窓回り商品市場を取り巻く経営環境は次のように様変わりしていくものと考えられます。
●消費者と事業者の共創・協働でつくるサステナブル志向社会の時代へ・・・
先の消費者庁長官・伊藤明子氏は『だまされない消費者+自分で考える消費者が増え、消費者と共創・協働して社会価値を貢献させる経営が重要である』と日経SDGsフォーラムの基調講演の中で述べておられましたが、
2030年に向けて、サステナブル社会実現への消費者の関心・参画意識は年々高まるものと考えられ、消費者とのWIN-WINの関係の中で、「つくる責任・つかう責任」は一層の広がり、浸透を図っていくものと考えられます。
窓回り商品市場においても「サーキュラーエコノミー社会の実現」は時代の要請であり、人と環境にやさしい持続可能な社会への貢献と企業価値向上は重要な経営課題となっております。カーテン、ブラインド、スクリーン類等の窓回り商品の産業廃棄物の再資源化・リサイクル化やサステナブル商品の開発・提供や、見本帳の回収・リサイクル問題などなど、2030年に向けた具体的な取り組みと目標達成が問われる時代となっております。
●地域に軸足を移した事業展開とブランディング力が問われる時代へ・・・
ニトリグループによるカーテン回収キャンペーンでは、消費者(エンドユーザー)から持ち込まれた、不要になったカーテンが重量累計で約930トン、参加されたお客様は26万2千人(2023年11月末現在)に達したとのことであり、これらは消費者のサステナブル社会への参画意識の高まりの表れであり、製造小売業の強みをいかした、各地域店舗による地域密着型の事業展開そのものと捉えることができるかと思われます。
これまでのように本社・本部による全国一律の政策や事業展開から、これからは地域に軸足を移した、地域の特性をいかした、地域密着型の隙間のない事業展開、戦略が重要となり、他社や他店並みの商品や機能・サービスだけでは差別化を図るのは難しい時代となってきたのではと考えられます。
消費者や顧客に対し、自社・自店の強みをどう伝えていくか、商品・サービスだけでなく提案力や情報発信力等々、地域々の特性をいかしたブランディング力が問われる時代となったと考えられます。
●新設住宅は70万戸時代へ・・・
これまでの新築需要依存のビジネスモデルの見直しが問われる時代へ・・・国交省発表の2023年11月の新築住宅着工戸数は6ヶ月間連続で減少しており、季節調整後の年率換算は77万5,000戸(前年は86万828戸)で推移しております。
各研究機関発表による新設住宅着工戸数の中長期予測は下表の通りであり、矢野経済研究所、野村総合研究所の予測では「新設住宅は2020年代の80万戸台から~2030年代には70万戸台まで減少する」と予測されております。新設住宅の減少は開口部・窓面積の減少となり、カーテン等窓回り商品の新規需要の大幅な減少となり、カーテン産地の生産量の大幅な落ち込みに直結します。
新築市場がシュリンクしていく環境下にあっては、従来型にはない窓辺の新しい装い方や暮らしぶり提案などなど、自社の「強み」をいかした、地域の特性をいかした顧客直結型の情報・商品・サービスの提供が求められることになりそうです。
<参考:各研究機関発表の新設住宅着工戸数予測、単位:万戸>
2022年度(実績) | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | 2030年度 | |
矢野経済研究所 | 86,1 | 85,0 | 83,0 | 82,1 | 74,5 |
野村総合研究所 | 86,1 | 88,0 | 86,0 | 83,0 | 74,0 |
三菱総合研究所 | 86,1 | 84,8 | 84,6 | ||
三井住友信託銀行 | 86,1 | 84,6 | 81,5 |
●リノベーション住宅市場の増加・拡大へ・・・
新設住宅市場の減少傾向の一方で、リノベーション住宅市場の増加・需要拡大が期待されています。野村総合研究所によると「既存住宅市場は今後ゆるやかに増加し,2030年には19万戸まで上昇する」と予測されおり、2040年までは年々拡大基調にあるとされています
新型コロナによるステイホームやリモートワーク等お家時間の増加や暮らしぶりの変化や、サステナブル志向社会の中にあって、これまでのような新築願望から~既存住宅の機能や利用価値が再認識されており,新たなライフスタイルにあわせた「リノベーション住宅」市場がこれからの成長分野として期待されております。
リノベーション住宅事業にどのように関わり、攻略し、新規需要先を開拓していくのか・・・窓回り商品もこれら変化、動きにあわせた市場創造・需要の広がりが期待されるところです。
●非住宅市場・木造建築物の増加・市場拡大へ・・・
公共建築物等木材利用促進法の施行により,公共福祉施設や教育施設などの非住宅建築物の木造化が進んでおり,公共に限らず民間の病院や福祉施設などの非住宅建築物にも適用されることになっており、非住宅市場・木造建築物が増加しております。
矢野経済研究所によると非住宅木造市場は回復基調にあり、2025年度には床面積ベースで124,8%(2021年度比)4,400㎡、同工事費ベースで129,4%増の7,700億円まで市場規模は拡大すると予測されています。環境負荷に大きく寄与する非住宅・木造建築物は今後ますます増加していくものと見込まれております。
林野庁、国交省による官民挙げての持続可能な循環型の森林経営への取り組みや国産スギ材の利用拡大が進む中で、内装インテリアにおいても木の持つ質感や温もり感などが求められ、窓回り商品もこれら動きにミートした新たな装いや機能が求められることになります。
●窓の省エネ・高断熱化が進み 窓辺は新しい装いや機能が求められる時代へ・・・
樹脂窓・木製窓等による窓の脱アルミ化、高断熱化が進んでおります。先の国会で「先進的窓リノベ事業」の2024年度予算が可決承認され,補助金総額は1,350億円に増額されることになり、内窓設置や外窓交換による窓の高断熱化が更に加速されることになります。
また2025年には、全ての建築物・住宅には省エネ基準の適合が義務化され、2030年にはZEH水準に引き上げられます。(創エネを除く断熱、省エネ性能をクリアすること)
これら動きを受けて・・・窓の省エネ・高断熱化が一気に普及、拡大し、断熱窓のある冬の窓辺は暖かで、室内環境は大幅に改善されるなど、働き方やお家時間の過ごし方など消費者の嗜好や生活様式が様変わりしていくのと相俟って・・・従来とは違った、窓辺の新しい装い方や機能やスマートな暮らしぶりが求められる時代になりそうです。
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窓回り商品市場を取り巻く経営環境の変化について・・・代表される変化・課題を取り上げてみましたが、これら時代の変化・課題にどう向き合い,自社・自店の強みとしていくのか、サステナブル志向の社会にあって、社会課題解決に向けてどういう貢献を果たしていくのか・・・2030年に向けて、ブランディング力の強化が問われることになりそうです。
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