月: 2024年3月

大阪高裁にて「昇降式網戸の操作コードによる 女児の死亡事故に対し 5,800万円の賠償命令」・・・ブラインド類のチャイルドセーフティ部品の総点検と警告表示義務の徹底へ  

去る2019年、昇降式網戸の操作コードで6歳の女児が亡くなった痛ましい事故に対し、本日(3月14日)、大阪高等裁判所にて「製品に欠陥があり、企業の製造物責任が認められる」として、メーカー、施工会社2社に対し、約5,800万円の賠償命令が出されました。

●新聞報道によると網戸はリフォーム時に取り付けられたものであり・・・

取り付け後3日目の事故でした。網戸の昇降コードにはチャイルドセーフティ部品として、子供の手の届かないところにコードを束ねておく、クリップを装着する方式になっていたものの、実際にはクリップが装着されていなかったことや、取扱説明書も同封されていなかったミスが重なったこと、又、リフォームの取付・施工時にコードの危険性について両親に説明することを怠ったとして、注意義務違反に問われたものです。 

●ブラインド、ロールスクリーン類の操作コードの安全対策については・・・

1)製品上においては・・・JISA4811「家庭用室内ブラインドに付属するコードの要求事項ー子どもの安全性」として操作コードやチエーンがJIS規格で制定されています。

6歳未満の子供の身体寸法をもとに、手の届く範囲(高さ)に操作コードがないように束ねたり(コードクリップ方式)、一定の荷重がかかるとジョイント部分が分離する(セーフティジョイント方式)など、JISでは具体的な数値が設定され、規定されています。

市販されている各メーカーのブラインド、ロールスクリーン類の主なチャイルドセーフティは、これら「コードクリップ方式」や「セーフティジョイント方式」など、事故防止のための安全対策をとるようになっておりますが、今回の事故および高裁判決を機に、今一度製品上の安全対策について設計上、仕様上の不備はないか・・・総点検が必要と考えられます。

2)運用管理面で重要なことは・・・製品上においてはチャイルドセーフティ部品による安全対策がとられていたとしても、これら部品が製品の組立・出荷段階で間違いなく装着・同梱されているか、取付施工・引き渡し時にエンドユーザーに対し、操作コードの危険性と注意すべき事項についての説明、警告表示が徹底されているか・・・製品の出荷から~引き渡しに至る運用管理上の二重、三重の安全対策の徹底が求められることです。

店頭商品においては中国、東南アジアを生産拠点とする完成品輸入が増えています。ホームセンター等の店頭で消費者が完成品で購入していくケースであり、製品上および運用管理面において、操作コードの安全性や警告表示義務上の不備や徹底を欠くことはないか、今回の事故を機として、店頭商品の安全性の総点検が求められるところです。

●今回の高裁判決を受けて・・・

今回の事故は操作コードにコードクリップが装着されていなかったり、取扱説明書や取付施工現場での安全性の注意義務を怠ったりと・・・運用管理上の問題が大きかったものの、

これを機として、改めて、チャイルドセーフティー製品・部品類の安全性の総点検と運用管理の徹底、取付施工時の安全性の再確認等、痛ましい事故が発生することのないよう、事故防止の徹底が求められるところです。

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所***    

ロールスクリーン市場の活性化(その3)・・・サステナブル商品のタイムリーな市場投入と 提案力・情報発信力の強化    

近年のロールスクリーンは一時期の勢いに陰りが見え、前年割れが続いております。 新設住宅着工戸数の減少等による影響はあるものの 近年の新製品発売は一部を除き話題性や市場の活性化に今ひとつ結びついていない状況が伺えます。新設住宅市場は70万戸時代を迎えるなど、室内装飾事業を取り巻く経営環境が様変わりしていく中で、ロールスクリーン市場が縮小することのないよう、市場活性化・需要拡大に繋がるタイムリーな新製品の投入やサービスの提供が求められるところです。

1,近年のロールスクリーンの市場規模動向(単位:億円)・・・   

<表-①>

2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度備考
年度別市場規模255,3267,3263,3263,0261,5
前年比(%)101,8104,8*98,4*99,9*99,4
           注;出所NIF「市場規模の策定」より引用・作成

<概況等>ロールスクリーンは1980年上市当初は3億円にも満たない市場でしたが、順調に売上を伸ばし、今や260億円市場を形成するまでとなりましたが、近年はその勢いに陰りが見え、前年を割り込む状況が続いております(表ー①参照)。 

マーケットがこれ以上シュリンクしていくことのないよう、ロールスクリーン市場の活性化・需要拡大策が急がれるところです。

2、近年のブラインドメーカー主要3社のロールスクリーンの新製品発売状況等・・・  

*対象期間は2021年4月~2024年2月末現在、各社製品情報等よりリストアップ。部品類・設計変更は除く。

<表-②>

    2021年度              2022年度             2023年度*             
タチカワ   ①透明スクリーン「クリアー抗ウイルス・抗菌」発売
②ラルクシールドリニューアル
①抗ウイルス・抗菌生地のラインナップ
②デュオレのラインナップ
①調光ロールスクリーン「ルミエ」発売
②新生地「マカロンラテ」発売
③ホームタコスHEMSアダプタ発売
④ホームタコスラルクシールド  にブラック色追加
⑤電動分岐ジョイント発売
ニチベイ①調光「na・na・ri」モデルチエンジ
②調光「Raiure」をモデルチェンジ
     ー①ソルティタッチ遮熱新色追加
②「ソフィ」ガイドレールタイプをリニューアル
③HEMS連動ELアダプタ発売
トーソー①ルノプレーン抗ウイルス発売
②透明スクリーン「抗ウイルス・抗菌」発売
     ー①コルトシリーズのリニューアル

概況等・・・直近3年間の主要3社の新製品発売状況は表ー②のとおりとなっております。

タチカワブラインドは毎年新製品を発売し、3社の中で新製品発売数は一番多く、同社の「統合報告書2023」によると、2021年度のスクリーン市場のシェアーは40%弱、業界第1位となっており、年々シェア拡大が進んでおります。これら要因の一つは、マーケットへのタイムリーな新製品の投入、仕掛けによる自社優位の戦略によるものといえます。

3,新製品の開発・市場投入はメーカーにおける核心部分である・・・  

ロールスクリーンは廃柄・在庫リスクの問題や売上原価率が高い等々、収益力改善に向けた努力が求められますが、これらを理由に、開発投資や新商品開発・技術開発への取り組みが後退することのないよう願うところであり、新製品の開発・発売はメーカーにおける核心部分そのものであり、マーケットへのタイムリーな新製品の投入は経営上の重要な戦略であるといえます。

4,サステナブル商品の拡大・強化に向けて・・・

サステナブル志向社会の中にあって、産業廃棄物の再資源化やリサイクル素材の有効活用、植物由来素材や環境負荷素材の応用展開等々、リサイクル・環境配慮型製品の開発は時代の要請であります。

環境問題や社会問題に対する消費者の関心は年々高まり、SDGs活動を進める企業の商品やサービスを積極的に利用することが見込まれる中で、2030年までにはサステナブル商品化比率40%超を開発目標に設定するなど、商品の企画・開発・設計段階から環境に配慮した「ものづくり」に徹し、持続可能な社会の実現・社会貢献を果たしていくことが求められています。

2030年を期限とするSDGs開発目標の進捗状況において、『つくる責任・つかう責任は深刻な課題がある(Major challenges)』との評価であり、目標達成への出遅れ感が強いと判断されています。「Greenwashing=見せかけの環境配慮」に留まることなく、具体的成果の実現に向けての取り組みを加速していく必要があります。

5,自社・自店の強みをいかした提案力や情報発信力強化へ・・・

研究開発や技術開発による、これらサステナブル新製品のタイムリーな市場投入・発売はマーケットへの強力な提案力・情報発信力となり、消費者やマーケットを自社に向かせる、自社優位の戦略に直結していくものといえます。

ロールスクリーンは窓まわり商品の中では用途展開に優れた商品であり、窓辺の新しい装いや電動化によるスマートな暮らしぶり提案や、サステナブル商品の開発強化等々、自社・自店の強みをいかした提案力や情報発信力の強化を図り、ロールスクリーン市場の活性化・需要拡大に繋げていきたいものです。

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発******  

『日経SDGsフォーラム』より・・・折り返し点を過ぎたSDGsと消費者志向経営

先の2024年2月26日(月)日経ホールにて、『日経SDGsフォーラム・消費者との共創でよりよい社会を』と題した、消費者庁長官・新井ゆたか氏等による特別シンポジュームが開催されました。SDGs開発目標17の達成状況の中で、「つくる責任・つかう責任」はMajor challenges深刻な課題がある)と評価され、目標達成への取り組みが出遅れているとのことであり、室内装飾事業経営においても、2030年の開発目標達成に向けて、社会課題解決への取り組みを加速させていく必要があります。

ーーー消費者庁長官・新井ゆたか氏等による講演内容の要点ーーー 

●「エシカル消費」と「消費者志向経営」・・・SDGsの達成に向けては、エシカル消費(つかう責任)と消費者志向経営(つくる責任)を車の両輪として推進していくことが重要であり、

●消費者志向経営とは・・・持続可能な社会に貢献することを目標とし、消費者と共創・協働し、商品・サービスの改善等を通じて、消費者の行動変容を促し、社会価値の向上をめざす経営であるとのことです。

共創・協働とは・・・事業者が消費者との双方向コミュニケーションにより、消費者がわくわくする商品・サービス・体験を共有し、消費者とのWIN-WINの関係になることであり、

社会価値は・・・事業者が本業を通して、地域や社会の課題解決に寄与し、社会全体の持続可能性の向上をめざすことから生み出されるものであるということです。

●SDGsの認知度調査によると・・・株式会社電通が2023年2月に実施した第6回「SDGsに関する生活者調査」では、日本におけるSDGsの認知度は年々高まり、2023年には、①内容まで含めて知っている40,4%+②内容はわからないが名前は聞いたことがある51,2%=計91,6%・・・と90%超に達したとのことであり、

朝日新聞社が2023年2月に実施した第9回「SDGs認知度調査」によると、SDGsに沿った商品であるか、SDGsの活動に熱心な企業のサービスであるかを、購入・利用する際に考慮するかどうかの調査では、全体の36%が考慮するということである。

これら調査結果からもわかるように、消費者との共創・協働による持続可能な社会への貢献と企業価値向上は経営上の最優先課題であり、室内装飾事業においても、2030年に向けての具体的成果の実現、目標達成が期待されるところです。

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以上は、2024年2月26日(月)開催の『日経SDGsフォーラム・消費者との共創でよりよい社会を』における消費者庁長官・新井ゆたか氏の講演内容より一部抜粋・引用させていただき、お届けするものであり、貴社・貴店の皆様の経営上の参考になれば幸いです。 

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所***  

 「エシカル消費」と「消費者志向経営」・・・SDGsの達成はエシカル消費と消費者志向経営を車の両輪として推進することが重要である・・・