月: 2024年4月

東京大学・日本サッシ協会 産学連携による「樹脂窓リサイクル」への取り組み状況等

東京大学と日本サッシ業界等において、産官学連携による「樹脂窓リサイクル」技術の確立に向けた取り組みが進んでおります。・・・インテリア業界においても、市中の不要になった窓回り商品の再資源化・リサイクル化等 社会課題解決に向けて、業界&メーカーが一体となった取り組み・強化が待たれるところです。

【1】東京大学・日本サッシ協会等による「樹脂窓リサイクル」構築に向けて

 <出所:樹脂窓リサイクル検討委員会の樹脂窓リサイクルビジョン、各社統合報告書等より引用・作成>

日本サッシ協会の調査によると、断熱性能に優れた「樹脂窓」は新築住宅で28,5%と年々増加傾向にあり、2030年に向けてアルミ窓は減少し、アルミ樹脂複合窓や樹脂窓の普及・拡大が見込まれる中で、市中の使用済み樹脂窓は大部分がリサイクルされず、埋立廃棄処分となっており、埋立処分量の削減、樹脂窓のリサイクル化は喫緊の社会課題となっております。

これら社会課題解決に向けて、産官学連携による「樹脂窓リサイクル検討委員会」が発足し、これまでにリサイクルシステムの社会実装実験等、システム構築に向けた取り組みが進められております。  

【樹脂窓リサイクル検討委員会】とは・・・委員長、東京大学大学院・新領域創成科学研究科 清家 剛教授;委員・・・LIXIL、YKKAP、三協立山、エクセルシャノン、不二サッシ; 事務局・・・日本サッシ協会、樹脂サッシ工業会、塩ビ工業・環境協会;オブザーバー・・・環境省、北海道庁 他

1)樹脂窓リサイクルのしくみづくりに向けて・・・

①回収のしくみづくり・・・地方自治体、解体業者等との連携による回収のしくみづくりの支援。

②効率的なリサイクル技術の確立・・・中間処理業者、リサイクル協力企業とともに、分離回収、異物除去等の技術開発支援による、リサイクルシステムの実装化をめざす。

③リサイクル・環境配慮型製品の開発・・・ハウスメーカー、工務店、樹脂窓メーカーとの共同で、再生材を用いた樹脂窓等のリサイクル製品の開発、易解体構造化など環境配慮設計の促進等

④樹脂窓リサイクル量の目標・・2030年までに工場内で発生する端材の再利用・再資源化+市中の使用済み樹脂窓の回収分、合計で10,000トン/年の再生材活用をめざす。

2)YKK AP(株)の発表によると・・・

他社製品も含めた使用済み樹脂窓由来の再生原料を利用した「マドtoマド」リサイクルによる商品の2024年度中の実用化をめざすとなっており、「環境負荷ゼロを実現」に向け、業界一体となって取り組みを加速させていくということです。

3)サッシ業界では2030年度に向けたSDGs開発目標達成が見込める段階である・・・

市中の使用済みアルミ窓については、2030年度までにアルミリサイクル率100%達成を目標に、富山大学とYKK APを始めとするサッシメーカーによる取り組みが進んでおります。

これら取り組みの結果、サッシ業界においては使用済みアルミ窓や樹脂窓の埋立処分量の削減、リサイクル技術の確立等、2030年度に向けた具体的な成果の実現、SDGs開発目標達成が見込める段階にきております。

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【2】カーテン、ブラインド等窓回り商品においても,業界・企業が一体となって

1)使用済み窓回り商品の大半は単純焼却・埋立処分である・・・主要メーカー各社の環境・社会課題解決に向けた取り組みでは「サーキュラーエコノミー社会の実現、産業廃棄物の再資源化、環境に配慮した製品開発や企画・設計段階から再資源化を見据えたものづくり」がマテリアリティ(重要課題)として掲げられており、

一部メーカーにおいては、カーテンのケミカルリサイクル・再資源化への取り組みが進められてはいますが、対象、効果は限定的であり、市中の不要になった、使用済みカーテンの大半は単純焼却・埋立処分されており、社会課題解決に向けた取り組みが急がれます。

2)使用済み窓回り商品の単純焼却・埋立処分量の削減、リサイクル化に向けて・・・日本インテリア協会の「WT市場規模の策定」によると、2022年度のWT商品市場はカーテン1,019億円、ブラインド305億円、スクリーン358億円、カーテンレール類219億円、合計1,901億円となっておりますが、毎年これら市場規模に見合う、相当量の使用済み窓回り商品の大部分が単純焼却・埋立処分となっており、

2030年度のSDGs開発目標達成に向けて、インテリア業界においても出遅れることなく、カーテン、ブラインド等使用済み窓回り商品の単純焼却・埋立処分量の削減、産業廃棄物の再資源化・リサイクル化等、業界およびメーカーが一体となった取り組みが待たれるところです。

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【折り返し点を過ぎたSDGs(その2)】・・・使用済みカーテン・ブラインド・スクリーン・カーテンレールの単純焼却・埋立処分量の削減と 「回収・分別・リサイクル」技術の確立に向けて(加筆改訂版)

SDGsの2030年開発目標達成に向けて、循環型社会の実現が重要な経営課題となっておりますが、インテリア業界においては使用済みカーテン・ブラインド・ロールスクリーン等の「回収・分別・リサイクル化」への取り組みが出遅れており、現状これら製品の大半は単純焼却・埋立処分されております。産業廃棄量の削減と資源の有効活用・リサイクル化は喫緊の重要課題(マテリアリティ)であり、社会課題解決に向けた取り組みを加速、強化していく必要があります。

1,主要各社の「カーテンの回収~リサイクル」の現況等(各社ニュースリリース、統合報告書等より引用・作成)

リサイクル 区分  カーテンの回収~リサイクルの現況等 回収(率)状況等
川島織物セルコン・ケミカル
・マテリアル
広域認定の取得。
「川島織物・リサイクルカーテンマーク」を付けた不要になったカーテンが対象。
新日本製鐵と提携したリサイクル
システムの導入(使用済みカーテンを
炭化水素油やガスなどの化学原料として
再生活用)
回収数量等の具体的
情報開示はなし
サンゲツ・ケミカル
・マテリアル    
・サーマル
サンゲツカーテン・エコプロジェクトに
よる。「サンゲツカーテンリサイクル
システム」のタグラベルがついている
カーテンが対象
累計実績
(2023年9月時点)
ケミカル 3,505kg
マテリアル1,500kg
サーマル 14,695kg
東リ・ケミカル
・マテリアル
広域認定にもとづくリサイクルの
実施。リサイクル専用ラベルが付いた
カーテンが対象,有料(家庭用は対象外)
リサイクル材料によるAJフックの
製品化。
回収数量等の具体的
情報開示はなし
ニトリ・マテリアル
*リユース
全店舗で、他社品を問わず、使用済み
カーテンの常時回収受付を開始中。
自動車の断熱材「フェルト」への
リサイクル。東南アジアのリサイクル
ショップでのリユース展開
累計実績
(2022年度~2023年11月)
重量累計930トン、持ち込んだ客数26万2千人。

注1):広域認定制度とは・・・製造、加工、販売等の製造事業者が廃棄物の処理を広域的に行うことを環境大臣が認定する制度であり、廃棄物処理に関する地方公共団体毎の許可を不要とする特例制度をいう。広域認定を受けた製造事業者は、行政の許可を受けることなく自社製品を回収、処分できることになります。(環境省)

注2):カーテンのリサイクル活用方法は・・・①ケミカルリサイクル・・・回収したカーテンの再資源化、繊維原料化する方法。②マテリアルリサイクル・・・回収したカーテンを他の繊維製品(フエルト等)に加工する方法。③サーマルリサイクル・・・回収したカーテンを固形燃料化して熱エネルギーとして利用する方法・・・に大別することが出来ます。 

注3):ブラインド、ロールスクリーン、カーテンレールについては・・・各メーカーからの使用済みブラインド、ロールスクリーン、カーテンレールの回収~リサイクルへの取り組み情報の開示はなし。現状は単純埋立・廃棄処分が全てと思われます。

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2,2030年に向けての企業責任と社会課題解決に向けて 

1)「つくる責任・つかう責任」等SDGsの2030年目標達成に向けて・・・

使用済みカーテンの大半は焼却・廃棄処分されており、コントラクトだけでなく一般家庭用カーテンも対象とした「カーテンの回収・リサイクルシステム」の構築と具体的成果の実現が急がれます。カーテンに限らず、近年大きく市場拡大を図ってきたブラインド、ロールスクリーン等メカモノにおいても「回収・分別・リサイクル」システムの構築が急がれるところです。

2)「つくる責任」において・・・ 

廃棄物自体そのものを減らす、不要になったカーテン,ブラインド等の単純焼却・埋立処分量の削減は喫緊の重要課題であり、これからは分別し易い、リサイクル容易な、資源循環型の製品の開発、技術開発が重要になってきます。

3)資源の有効活用による循環型社会の実現に向けて・・・

アルミ窓、樹脂窓等サッシ業界においては、東京大学、東北大学、富山大学との産官学連携による、アルミリサイクル技術の確立等に向けた取り組みが既に進んでおります。

インテリア業界も出遅れることなく、2030年のSDGsの開発目標達成に向けて、川上から川中、川下に至る全員参画型の取り組みによる資源循環型社会の実現をめざし、サステナブル志向時代の要請に応えていきたいものです。

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ニトリの『オーダーカーテンスピード納品』注文から 最短 中2日で納品・・・顧客ニーズに寄り添った商品・サービスの提供 

オーダーカーテンスピード納品・・・ニトリでは通常オーダーカーテンは10日前後でのお届けとなるところ、「もっと早く届けてほしい」という、急ぎの顧客のニーズに応え、注文から最短中2日で納品。 関東、中部地区の120店舗で実施中(他地域へのお届けは最短で中3日)、価格はプラス2,200円で対応、対象カーテンは13種類で、スピード納品は1,5倍ヒダ、2倍ヒダ仕様のみ対応可能。

1,カーテン産地と直結した顧客重視・地域密着型の商品・サービスの強化へ・・・ 

1)株式会社 維研の子会社・・・ニトリグループのカーテンメーカーで、オーダーカーテンの縫製加工も手がけるホームデコ株式会社(本社・埼玉須賀市)が、昨年9月に、カーテン産地である愛知県江南市の「株式会社 維研」を子会社化しましたが、

年間約95万mの生産量を有し、オーダーカーテンの製造卸では長年の実績のある(株)維研をニトリグループに取り込んだことで、オーダーカーテンの企画・製造・販売までの一気通貫型の体制が更に強化されることになりました。

2)顧客直結型のものづくりと販売担当のプロ化・専門化・・・ニトリグループにおいては店頭で得られた顧客情報や受注したカーテン等の商品情報(部屋のタイプ、窓の形状、サイズ・色柄・スタイル・・・などなど)が、商品企画・デザイン・設計部門やカーテン産地へ迅速かつ確実に届けられ、ものづくりに反映される仕組みづくり・システムが構築されており、近年はオーダーカーテン等窓回り商品の人材教育にも注力し、販売担当のプロ化・専門化が進んでおります。

去る3月29日(金)、ニトリグループは1,000店舗を達成しました。全国店舗展開による、製造物流小売業の強みをいかした、お客の要望・不満・不平をすぐ形にしていく、顧客重視・地域密着型のオーダーカーテン等の受注・生産・サービスの提供は、2030年に向けてますます強化されていくものと考えられます。

2030年に向けて、室内装飾事業を取り巻く経営環境はますます厳しくなることが予測される中で、これら製造物流小売業の事業戦略をベンチマークとして、自社・自店の強みや差別化、高度専門化をどのように図り、顧客の皆様への提案力、情報発信力の強化へ繋げていくかが問われる時代といえそうです。

2,全店舗で展開中の「カーテン回収キャンペーン」の回収状況は・・・ 

2022年度から~2023年11月末までに、ニトリグループの国内店舗に持ち込まれた、不要になったカーテンが「重量累計で約930トン、持ち込んだお客様は26万2千人」に達したとのことであり、2023年度末までには大台の1,000トンに達するのではと見込まれます。

他社のカーテンや販売元にこだわらず、持ち込まれた不要になったカーテンは製品や生地素材としてリユースされたり、自動車の内装断熱材・フエルトへリサイクルされております。

インテリア業界においても、2030年に向けて、産業廃棄物の再資源化や有効活用等、カーテン、スクリーン類の回収~リサイクルシステムの構築が急がれるところです。

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