月: 2024年10月

カーテン市場が大幅に減少 年々の減少傾向に歯止めがかからず・・・需要喚起・市場活性化策が急務である

日本インテリア協会発表の「2023年度市場規模の策定」によると、カーテンの市場規模は前年度対比6,7%減の950億円と大幅な減少となりました。カーテン市場は年々の減少傾向に歯止めがかからず、この10年間で、実に15,2%減、170億円の減少となっており、新たな需要喚起・拡大に向けた歯止め対策が急がれます。

1,この10年来のカーテン市場の動向と概要等

(単位;億円、(%)は表中の前年度対比。出所;日本インテリア協会の「市場規模の策定」より引用・作成)

 2014年度  2017年度(%) 2020年度(%)2023年度(%)
①カーテン1,1201,108 (98,9%)996 (89,9%)950 (95,4%)
②ロールスクリーン 238251 (105,5%)263 (104,8%)265 (100,8%)
③窓回り商品全体2,000 1,999 (99,9%)1,884 (94,2%)1,842 (97,8%)
④全体構成比 カーテン①/③56,0%55,4%52,9%51,6%
   ロールスクリーン②/③11,9%12,6%14,0%14,4%

2,カーテン市場はこの10年間で170億円の減少・・・  

この10年間におけるカーテンの市場規模は、2014年度の1,120億円から~2023年年度には950億円と170億円も減少しており、2023年度/2014年度対比で84,8%、15,2%の減少となっており、年々のカーテン市場の減少傾向に歯止めがかかっておりません。

国産カーテンの生産量の落ち込みは大きく、日本カーテン協会の調べでは2023年度は60,575千㎡、前年度比83,0%と大幅な減少となっており、年々生産量の落ち込みが続いており、カーテン産地への影響は大きなものがあります。

一方、ロールスクリーン市場においては・・・この10年間で市場規模を2014年度の238億円から~2023年度には265億円、11,7%増と年々市場規模拡大を図ってきています。

窓まわり商品市場全体に占めるカーテンの構成比は、2014年度の56,0%から⇒2023年度には51,6%と年々右肩下がりの落ち込みとなっており、このままでは2~3年後にはカーテンは50%を割り込むのではないかと推測されます。一方、ロールスクリーンは2014年度の11,9%から⇒2023年度には14,4%と年々構成比は増加しています。(上表参照)

3,カーテン市場減少の本質の原因は・・・

室内装飾事業を取り巻く経営環境は新設住宅着工戸数の減少や円安の進行、原材料価格の高騰等々、厳しい経営環境が続いていますが、これらはカーテン市場だけに限るものではなく、ロールスクリーン等も同様の環境下にあるわけであり、何故カーテンは年々減少傾向が続くのか・・・

当研究所の見立てでは・・・カーテン市場減少の本質の原因は『この10~20年間、カーテン市場においては、カーテン&カーテンレールによる、画期的で革新的な機構・機能開発やシステム開発が皆無であり、効果的な需要喚起・市場活性化策が打ち出せなかった』ということにあると考えています。

4,窓とカーテンの歴史の中でカーテンレールはエポックメイキングの役割を担ってきた

これまでの「窓とカーテン」の歴史の中で、カーテン市場の活性化、新たな需要喚起・拡大において、カーテンレールは節目節目で大きな役割、牽引役を担ってきたといえます。

『カーテンロッドからカーテンレールの時代へ』⇒『ダブルブラケット、ダブル付カーテーレールの普及・拡大により、ドレープ+レースのダブル付けカーテンが一般化し、広く普及・拡大の時代へ』⇒『装飾性レールや出窓専用レール、広幅ギャザーテープ等によるスタイルカーテン全盛の時代へ』⇒『木製レールの普及・拡大により、カーテン・カーテンレールが過去最大の売上市場へ』などなど・・・

カーテンレールは時々の時代の変化、要請に応え、市場を牽引し、エポックメイキング(epoch-making)の役割を果たしてきたといえます。しかし、木製カーテンレール以降のこの20年間、カーテン市場の新たな需要喚起・活性化に繋がる新製品の開発、市場投入は皆無に近く、今日に至っているといえます。

5,新たな機能性・装飾性を備えたカーテン&カーテンレールの市場投入、市場活性化へ

2030年のSDGs開発目標達成に向けて、室内装飾事業を取り巻く経営環境は大きく変化し、窓の省エネ・高断熱化が進み、消費者の嗜好や生活様式が様変わりしていく中にあって、窓辺はよりシンプルに、よりスマートに、よりサステナブルな装いなどなど、これまでにない機能が求められるようになります。

ロールスクリーン市場が上市以来、順調に市場規模拡大を図ってきた要因の一つに、調光機能や電動化商品の拡充や小窓対応等の機構開発や用途開発などなど、時代の変化や多様化するニーズにスピーディに応えてきたことがあげられます。  

カーテン、カーテンレールも、これまでのようにヒダを取ったスタイルや左右開閉機能にとどまることなく、新たな機構・機能付加型製品&システムによる、新たな装飾性と機能性を兼ね備えたカーテン&カーテンレールの市場投入、市場活性化策が急がれるところです。

『左右開閉+調光機能を兼ね備えた、調光カーテンレールシステムによる調光カーテンの市場投入や、窓辺をシンプルにスマートに装うドレイパーリーシステムレールの開発や、デザインプリーツテープやウエーブカーテンテープなどの副資材開発によるシンプルでスマートな装い方提案や、パネルスクリーンの良さを今一度見直し、軽量・シンプルタイプの新たなメカ・機構開発による「パネルカーテン」の投入等、カーテンファブリックスの持つ質感、優雅さを引き立てる新しい窓まわり商品として、需要喚起・拡大を図っていく』などなど、

多様化するニーズに対応した、新たな装飾性と機能性を兼ね備えた新製品の市場投入により、カーテン市場に「新たな風」を起こし、需要喚起・拡大を図っていきたいものです。

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所*** 

 

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日本インテリア協会による カーテン等の『2023年度の市場規模策定』に関連して

一般社団法人・日本インテリア協会より、「2023年度のインテリア事業の概況・市場規模の策定」が発表になりましたので、窓回り商品市場の概要等について、次の通りお届けさせていただきます。尚、詳細については日本インテリア協会発行・発売の「2023年度市場規模の策定」をご参照ください

カーテン市場については・・・2023年度の市場規模は前年度比93,3%と大幅な減少となっております。前年度となる2022年度は期中で、春、秋2回の価格改定・値上げが実施されたこともあり、一時的には前年度増となりましたが、カーテンの年々の市場規模減少は続いており、減少傾向に歯止めがかかっておりません。カーテン市場はこの10年間で▲15,2%の落ち込み、170億円の減少(2014年度は1,120億円⇒2023年度は950億円)となっております。

室内装飾事業における重要な経営指標である新設住宅着工戸数が、2023年度は80万176戸、前年度比7,1%減の影響があったものの、カーテン市場の減少傾向への歯止め対策が急がれるところです。

ロールスクリーン等繊維系メカモノ商品市場は・・・ロールスクリーン市場は265億円、前年度比101,4%、バーチカルブラインドの市場規模は73億円、101,0%と前年増となっております。ロールスクリーン市場はこの10年間で111,3%、27億円増(2014年度238億円⇒2023年度265億円)と順調に市場拡大を図ってきましたが、近年はその勢いに陰りが見えます。ローマンシェード、プリーツスクリーンについては前年割れが続いております。

●窓まわり商品市場の活性化・拡大に向けて・・・各研究機関発表の新設住宅着工戸数の短・中期予測では2020年代後半には70万戸台まで減少すると予測されており、住宅着工戸数の減少は開口部(窓)の減少となり、窓まわり商品への影響が大きく、室内装飾事業を取り巻く経営環境は大きく様変わりしていくものと考えられます。

窓は脱アルミ化が進み、アルミ樹脂複合窓や樹脂窓、木製窓による「窓の高断熱化」が一段と進むものと予測されており、窓の深化と共に、窓辺の装い方や機能も様変わりしていくものと考えられます。

窓辺の新たな装い方や機能性の提案、サステナブル商品の拡大強化や窓辺の電動化によるにスマートな暮らしぶり提案など、新たな装飾性と機能性を兼ね備えた商品・サービス・情報の提供が求められることになり、これら窓まわり商品市場の変化や要望等、多様化するニーズにどう応えていくかが・・・これからの窓まわり商品市場の活性化・市場規模拡大への「Key-Point」となりそうです。

(出所:文中数字は日本インテリア協会「市場規模の策定」より引用・作成)

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所***

 

『統合報告書2024』より・・・各業界を代表する サンゲツ・タチカワブラインド・ニトリ・YKK AP各社の 環境・社会課題解決への取り組み状況等

各業界を代表する、サンゲツ(カーテン壁装業界)、タチカワブラインド(ブラインド・スクリーン業界)、ニトリ(SPA・製造物流小売業)、YKK AP(サッシ業界)の「統合報告書2024」が発表になりました。各社の環境・社会課題解決への取組み状況とサステナビリティ方針等は次のようになっております。

カーテン・壁装業界、ブラインド・スクリーン業界、製造物流小売業界、サッシ業界を代表する、各社の「統合報告書2024」における環境、社会課題解決に向けての取組み状況、実績、目標等は次のようになっております。

人と環境にやさしい持続可能な社会への貢献と企業価値向上は中期事業計画における最重要課題であり、消費者との共創・協働による『つくる責任・つかう責任」の開発目標達成はサステナブル社会の要請であり、具体的成果の実現・積み上げが求められるところです。

  環境・社会課題     取組状況・実績・目標等
サンゲツ事業活動における環境負荷低減
ロングライフ商品の開発
見本帳リサイクル
・GHG排出量2025年度28%減(連結、2021年度比)
    2023年度実績14%減(2021年度比)
・見本帳リサイクル2025年度目標 
    営業回収分全量リサイクル30万冊
    2023年度実績リサイクル冊数11万9,064冊
タチカワ事業活動における環境負荷低減
・資源の有効活用、廃棄物の削減
環境に配慮した住空間の提供
・環境配慮型製品の開発
・生産、研究開発体制の構築
・GHG排出量30%削減(2021年度比)
・2023年度市場導入・環境配慮型製品実績
 フォレティア桐防炎スラット、ホームタコスHEMS
 アダプタ、調光ロールスクリーンルミエ等
・研究開発棟の着工(2024年10月)
ニトリサーキュラービジネスの推進
・商品の資源化
・パッケージの資源化
・廃棄物の削減、再利用
 排出前・・・分別して資源へ
 排出後・・・埋立せず再利用
持続可能な木材調達
・森林資源に関与しない材料調達
【2030年度目標】
・資源化を考慮した商品開発
・商品パッケージの環境負荷低減素材への切り替え
・廃棄物排出量50%以上の削減
・回収した商品の資源化率100%をめざす
 (カーテン回収実績;参加客数31万8,000人、
  回収重量 約1,170トン)
・産業廃棄物の再利用率95%以上をめざす。
  (2023年度実績 89,6%)
・環境、社会への配慮ができている木材調達100%を
 めざす。
YKK AP社会課題を解決し続ける商品
サービスの提供
       <2023年度実績・・・2024年度目標>
・高断熱窓化率   79%  ・・・   90%
  (戸建て住宅)
・樹脂窓化率    35%  ・・・   41%
  (戸建て住宅)
・サステナブル商品 40,3%  ・・・   43,1%
 (売上比率)
 

 ***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所***