月: 2024年12月

【年末のご挨拶】この一年「BLOG・インテリア余話」をご愛読・お引き立てを賜り ありがとうございました 

当研究所はインテリ業界の発展、窓まわり商品市場の拡大、カーテン産地の活性化等を願い、商品開発・技術開発・海外調達等に関わる技術経営支援活動を推し進めてきておりますが、これら活動の一環として、ホームページ『BLOG・インテリア余話』を開設し、時々の経営情報や業界動向、社会課題や、ものづくりに関わる政策課題等をタイムリーにお届けできるよう努めております。この1年、川上~川下に至る各企業やインテリア専門店、内装工事店、窓装飾プランナー等々、多くの皆様からのご愛読・お引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。

2024年1月~12月にお届けしました「BLOG・インテリア余話」の中で、多くのご関心やご感想・お問い合わせをいただきましたテーマは次のようになって2024年1月~12月にお届けいたしました「BLOG・インテリア余話」の中で、多くのご関心やご感想、お問い合わせ等をいただきましたテーマは次の通りとなっており

2024年1月~12月にお届けいたしました「BLOG・インテリア余話」の中で、多くのご関心等お寄せいただきましたテーマは次のようになっています。

●新刊「ロールスクリーンの専門的実践知識」の発行。専門的知識とスキルを深めていただくために。

●カーテン市場規模の大幅な減少、年々の減少傾向に歯止めがかからず・・・需要喚起・市場活性化策が急務である。

●WT商品市場を取り巻く経営環境の変化にどう向き合い、自社の強みとしていくか・・・ブランディング力が問われる時代へ。

●ニトリのカーテン回収等窓まわり商品の回収~リサイクルの実態と社会課題の共有化に向けて。

●「提案」調光カーテン、調光カーテンレールシステムの開発・上市によるカーテン市場の新たな需要喚起・拡大へ。

●川島織物セルコンからの・・・オフイス空間を機能的で美しく、カーテンファブリックで間仕切る「パーティションテキスタイル」の提案。

●折り返し点を過ぎたSDGs・・・使用済みカーテン、ブラインド、スクリーン、カーテンレールの単純焼却・埋立処分量の削減と「回収・分別・リサイクル」技術の確立に向けて。

2024年12月 インテリア技術開発研究所

『大阪・北新地の心療内科クリニック』の痛ましい火災事故から丸3年・・・木製ブラインドの防炎問題・防炎のあり方を考える 

26名の尊い命が犠牲となる「大阪北新地の心療内科クリニック」の痛ましい火災事故・事件から、12月17日で丸3年となりました。火災からの痛ましい事故を未然に防ぎ、安心・安全を最優先していくことの大切さを痛感させられた出来事でした。・・・この痛ましい出来事と木製ブラインドの防炎問題とは直接の関係性は無いですが・・・当研究所では毎年この時期は「窓まわり商品の防炎問題・防炎のあり方を考える日」としており、今年もまた「木製ブラインド」の防炎に関わる問題提起を取り上げます。

1)ロールスクリーンは1980年当初の上市から、全柄防炎でスタート・・・

現行仕様のロールスクリーンが国内で初めて上市された1980年当初から、ロールスクリーンは「全柄防炎であること」を大前提として、消防法第8条3の法の精神に則り、防炎防火対象物件向けであれ、一般住宅向け等であれ、防炎性能を有した、防炎ラベルが貼付された、安心・安全な「防炎物品」を届けていくことが基本となっています。

2)木製ブラインドは、いつまで「防炎製品」としての扱いに留まっているのか・・・

木製ブラインドの燃焼実験の経験はお有りですか;「怖いぐらいに炎をあげて一気に燃え広がります」

これまで当研究所では、機会ある毎に木製ブラインドの「防炎物品」指定に向けて、問題提起等してきておりますが、未だ「防炎製品」としての扱いに留まっています。

日本インテリ協会の2023年度の「市場規模の策定」によると、木製ブラインドは59億円市場を形成するまでに成長しました。天然木の持つ温もり感、高質・高級感が好まれ、タワーマンション等高層建築物を始めとして、住宅、非住宅市場ともに広く使用されるようになりました。

しかし現行の木製ブラインドは一部メーカー製品を除き、大半が非防炎品であり、かつ、カーテン、ロールスクリーンのように防火対象物での使用が義務づけられた「防炎物品」ではなく、「防炎製品」としての扱いとなっています。

木製ブラインドを起因とする痛ましい火災事故が発生してからでは遅すぎます。全柄・全樹種防炎性能を有する木製ブラインの開発・展開と、防炎防火対象物には「防炎物品」として、木製ブラインドの取付・使用を義務づけ、徹底していく・・・当研究所が毎年繰り返し問題提起してきたことです。 

3)カーテン、布製ブラインドのこれまでの防炎物品指定の歩みから学ぶべきことは・・・

出所;消防庁「防炎の実際知識」より引用・作成

     カーテン、布製ブラインド等窓まわり商品の「防炎対象物品」指定の歩み
昭和36年消防法施行令が制定される。各市町村は火災予防条例で劇場、ホテル等で使用するカーテン等の防炎化を義務づける。
昭和41年川崎市金井ビル火災(死者12名)、水上温泉火災(死者30名)において、カーペットの燃焼が問題視され、消防審議会において「高層建築物、地下街における防炎対策のあり方」として、カーテン等の防炎処理について配慮すべきことが答申される。日本防炎協議会が防炎カーテンに係る品質管理業務及び表示事業を開始する。
昭和43年消防法の改正により消防法第8条の3の規定が制定される
昭和44年磐梯熱海温泉火災(死者30名)の痛ましい火災事故を受け、消防法施行令が改正され、新たにカーテン、暗幕等が「防炎対象物品」として指定される。
昭和47年消防法施行令が改正され、新たに布製ブラインド、展示及び舞台用合板、繊維板等が「防炎対象物品」として追加される

上表の通り、布製ブラインドは昭和47年の消防法施行令の改正により、「防炎物品」として追加されています。カーテン、布製ブラインド等のこれまでの「防炎物品」指定の歩み、歴史から学ぶべきことは、今日の消防法第8条の3はこれまでの痛ましい火災事故を教訓として成り立っているといっても過言でなく、法令遵守の徹底を図り、火災からの痛ましい人身事故を未然に防ぎ、より安心・安全な防炎対象物品・窓まわり商品を提供していくことの重要性と責任が求められています。

4)木製ブラインドの全樹種・全柄防炎と「防炎物品」指定に向けて・・・

木製ブラインドが防炎物品としての扱いでないのは・・・現行の消防法施行令で定められた「布製ブラインドではないから・・・」との事由からのようであり、もしそうであるならば、布製ブラインドが防炎対象物品として指定されたのは昭和47年、実に今から半世紀以上の前のことであり、時代は大きく様変わりしています。

窓まわり商品市場は、ブラインドを構成する素材も綿やポリエステルなどの繊維素材を始めとして、木材や竹材、和紙や樹脂材、フイルム類等々多岐にわたっており、、消費者の嗜好や生活様式が大きく様変わりした令和の時代にあっては、「布製」だけでは括れなくなっております。火災からの痛ましい事故を未然に防ぎ、安心・安全を優先していく・・・時代の変化・市場の実態に見合った、木製ブラインドの防炎製品から防炎物品への見直しは時代の要請ではなかろうかと考えられます。

タワーマンション等高層建築物をはじめとする「防火対象物」には、防炎性能を有する「防炎物品」としての木製ブラインドの取付・使用を法的に義務づけしていく・・・痛ましい火災事故が起きてからでは遅すぎます。

5)「窓まわり商品の防炎問題・防炎のあり方を考える日」に当って・・・

当研究所では毎年12月のこの時期を『窓まわり商品の防炎問題・防炎のあり方を考える日』として、法令遵守の徹底、防炎ラベルの運用管理の徹底等を図っております。消防法第8条の3法令遵守、防炎ラベルの運用管理の徹底は室内装飾事業に携わるものとしてその責任は重いものがあります。

業界内においては、これまで時として、忘れた頃に、法の精神にそぐわない、法に反する事案が発生しています。防炎カーテンのトレサビリティの運用等やらなければならないことの徹底や、防炎ラベルの品目間流用などやってはならないことが発生することのないように、安全・安心な防炎物品をお客様に届けていくことの大切さを疎かにすることなく、法令遵守の徹底に努めていきたいものと考えております。

***「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所より*** 

新刊案内【ロールスクリーンの専門的実践知識】を発行。窓装飾の専門的実践知識とスキルを深めて頂くために・・・社員研修用教材としても最適な専門書。

基本編】では・・・カーテンとロールスクリーンの違いをご理解頂き、何故硬仕上樹脂加工が必要なのか、ロールスクリーン特有の外観特性基準等々の基本的知識を深めていただく内容となっています。

取付施工編】では・・・取付施工現場に応じた専門的知識とスキルの向上を図り、スクリーン選定や取付施工時の注意事項等、お客様への的確な助言と信頼性醸成に役立つ内容となっています。

関係法令編】では・・・消防法第8条の3の「法令遵守の徹底、やらなければならないこと・やってはならないこと」と題して、法体系の理解を深めていただくとともに、取付施工現場での法令遵守、防炎ラベルの運用管理の徹底等についての内容となっております。

・新刊申し込み等、詳しくは同ブログをご参照ください。

 

サステナブル商品化率の拡大・強化へ・・・カーテン等窓まわり商品市場の活性化、需要喚起・拡大をめざして 

はじめに・・・今年のJAPAN TEX 2024では、独のHEIM TEX2024同様に、2030年のSDGs開発目標達成に向けた「サステナブル商品」の政策提案や商品デビュー等々、大いな盛り上がりを期待したものの、一部を除き期待は見事に外れました。人と環境にやさしい、環境配慮型の製品開発や社会課題解決に向けた取組みが、窓まわり商品では具体的に進んでいないのではないかと思われる程に・・・静かな展示会でした。

1)「つくる責任・つかう責任」の進捗状況は最下位の「深刻な課題がある」という評価である

2024年のSDGs報告書によると、2030年SDGs開発目標12「つくる責任・つかう責任」の進捗評価は最下位の『Major challenges(深刻な課題がある)』となっています。日本の目標達成度は不十分な状況にあり、その中でも、窓まわり商品領域においてはかなりの出遅れ感があるものと想定されます。

2)カーテン市場の大幅な減少、歯止め対策は業界挙げて取り組むべき喫緊の政策課題である

(一社)日本インテリア協会の調査・発表によると、2023年度のカーテン市場は前年対比6,7%減の950億円と大幅な減少となりました。特に、国産カーテンへの影響は大きく、日本カーテン協会の調べによると、前年対比17,0%減と大幅な生産量の落ち込みとなっています。この10年来、カーテン市場の減少傾向は続いており、減少への歯止め対策や市場活性化は喫緊の経営課題となっております。

窓まわり商品市場の活性化、需要喚起・拡大に向けて、サステナブル商品化率の拡大・強化は最重要政策課題の一つであり、環境配慮、再資源化を見据えた商品開発や、不要になった窓まわり商品の単純焼却・埋立処分の現状から、産業廃棄物の削減、再利用など再資源化率100%をめざした「ものづくり」等々、循環型社会の実現に向けた製品開発・技術開発への取組みを加速していく必要があります。

3)来年のJAPAN TEX2025にはHEIM TEX2025に遅れをとることなく

JAPAN TEX2025においては・・・カーテンやロールスクリーン等メカモノ商品領域ともに、これまでの環境負荷の高い、ポリエステル等化石資源素材依存型製品から、環境配慮型素材・エコマテリアルによる「環境調和型製品」の開発・導入等々、サステナブル商品化率の拡大・強化による大々的な政策展示や循環型社会の実現に向けた具体的な成果の発表等を期待したいものです。

4)ロールスクリーン、バーチカルブラインド等繊維系WT商品に期待したいのは

2030年のSDGs開発目標達成に向けて、特にロールスクリーン等において期待したいのは、これまでのポリエステル100%依存の製品開発からの脱却を図り~人と環境にやさしい天然繊維や植物由来素材による商品開発力や加工技術力の強化・確立によるサステナブル商品の拡大・強化を期待したいところであり、消費者との共創・協働による持続可能な社会への貢献と企業価値向上を図っていきたいものです。

***これまでのヨーロッパ後追い型の商品開発スタンスから~対ヨーローパ発信型の商品開発、技術開発へと舵を切り、窓まわり商品市場へ新たな風を起こし、市場の活性化、元気に繋げていきたいものです。***

—「BLOG・インテリア余話」インテリア技術開発研究所—